第45話 正解なんて分からない
父さんに異動の話を聞いてから数日、俺は特に何も考えずに読書に勤しんでいた。咲夜は悩んでいるようであれから考え込んでいる姿をよく見かけるようになった。
父さん達に着いて行くにしろ着いて行かないにせよ、どちらを選択しても多かれ少なかれ後悔はするだろう。何かを選択するというのはそういうことだ。これからの生活に関わることなら尚更。だから悩むのは当然だが悩み過ぎるのもどうかと思う。
ゲームじゃないんだしどちらかが正解という訳でもないんだ。どんなに悩んだところで正解が分かる訳でもなし。それに悩みに悩んで決めたとしても直前になって不安になり、違う選択をするなんてことはよくあることだ。
ならばどちらを選んだとしてもいいようにある程度情報(今回の場合転入する学校等)を集めておいて、直前に直感で決めてしまえばいい。まだしばらく時間はあるんだ。その間ずっと悩み続けるのは嫌だし、悩んで決めた選択を直前になって翻したりしたらそれまでの時間が無駄になる。
そう決めてしまえば気楽なものだ。だからこうして能天気に読書していられる。読み終わった本を閉じ、お茶でも淹れようかと思ったところでふと疑問が湧く。
「そういや俺と咲夜のどちらかがここに残り、もう片方が父さん達に着いて行くのはありなのか?」
俺がここに残り、咲夜が父さん達に着いて行くのはまあ別にいいだろう。だが逆はどうだ?女子高校生が一軒家で一人暮らしってあまりよくないのでは?そう考えたところでふと気付く。
「よく考えたら楠木も一人暮らしじゃん」
楠木という先例があるし、女子高校生の一人暮らしも問題ないか。咲夜は家事もしっかりできるしな。
まあ咲夜がどちらを選ぶか知らんけど。
お茶を淹れてきて一息吐き、次はどの本を読もうか考えているとスマホの着信音が鳴った。画面を見るとかけてきたのは幼馴染の相川だった。昔は毎日のように一緒に遊んでいたのに今では顔を合わせることもなくなったな。
「もしもし?」
「久しぶり蓮夜。今大丈夫か?」
「ああ、何か用か?」
「用はあるけど久しぶりなんだし少し話そうぜ」
「まあいいけど」
そうしてお互いの近況を話したり、とりとめのない話をしたりした。
「夏休みに入って部活の時間も長くなってな、暑さも相まって毎回クタクタだよ」
「ふーん、大変そうだな」
炎天下での部活は大変だったなと昔を思い出しつつ時計を見るとそれなりに時間が経っていた。
「そういや結局何の用だったんだ?」
「あー…」
そう聞くと相川は少し間を置いてから答えた。
「なあ蓮夜、毎年行ってた夏祭りの日に予定ってあるか?」
「いや、特にないが」
この時期になると近所で夏祭りがある。去年は行かなかったが、それまでは毎年幼馴染達と行っていた。
「今年は夏祭りに行かないか?藤林と宮本も一緒に幼馴染四人で」
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