第34話 校長も見習ってくれないかな?

 本日は一学期の最終日。明日から夏休みだあぁぁぁぁぁぁ!



「さて、明日から夏休みに入る訳だが…とりあえずハメを外し過ぎて問題を起こすなよ」


 全校集会で校長の無駄になが…ありがたい話を聞き流し、HRなう。最初に言うことがそれって担任としてどうかと思う。むしろ担任だから?


 注意事項等を担任教師が話していくが、クラスメイト達は明日から始まる夏休みに意識がいっているのかソワソワしている。担任教師もそれが分かっているのか苦笑している。


「ハメを外したくなる気持ちも分かるが、問題を起こして俺の休みを減らしてくれるなよ。あと課題も忘れずにちゃんとやること。はいHR終わり!解散!」


 ソワソワしてるクラスメイトに気を遣ってか、大事なことはちゃんと話しつつも短くまとめてくれるのはありがたい。校長も見習ってくれないかな?






「なあ蓮夜せっかく早く帰れるんだしどっか遊びに行かね?」


「断る。他の奴と行ってこいよ」


 HRが終わって帰り支度をしていると西条がそう話しかけてきた。毎回最初は断るのによく何度も誘う気になるな。


「もちろん他の奴にも声はかけるけどよ、蓮夜は最初に声をかけておかないと帰るだろ?」


 俺の行動が読まれてる件について。まあ毎回同じ行動してるけど。


「これから蓮夜と遊びに行くけど一緒に行く奴いるかー?」


「おい」


 俺は了承してないのに西条がそうクラスメイトに声をかける。なんか最近どんどん強引になってきてないか?


「私行くー!」


「僕も!」


「私も」


 西条の声に反応して数人こちらに寄ってくる。ノリのいい奴等だ。


「蓮夜、どこに行くの?」


 寄ってきた藤林が俺に尋ねてくる。なぜ俺に聞く。俺が行くことは確定なの?


「とりあえずファミレスでお茶でもしながら考えようぜ」


 内心溜め息を吐きつつそう提案する。まあ明日から夏休みで時間あるから今日くらいはいいか。









「楠木さん、いったいどちらに行こうとしているのですか⁉︎」


「どこに行こうと私の勝手でしょ」


「その口調も何なのです⁉︎何度も言いましたが淑女たる者…」


 西条達とファミレスに向かっている途中に何やら騒がしい二人組を見つけた。騒がしいのは一人だけど。つーか片方は知った顔だ。


「あっ、お兄さんじゃん。こんなとこで奇遇ね」


「楠木さんまだ話は…」


 俺に気付いた楠木が話しかけてきた。


「よう、そっちも今日終業式なのか?」


「そうよ。早く帰れるからどっかに行こうかと思ってたんだけど…」


「楠木さん!私を無視してなに殿方と話しているんですか!」


 楠木と話していると楠木に適当にあしらわれていた女子が割り込んできた。


「……前に話していた奴?」


「……そうよ」


 楠木が面倒くさそうに肯定した。


「なんですかその反応は?ところでそちらの殿方は楠木さんとどのような関係なのですか?」


 こちらを訝しむように見てくる淑女(笑)。育ちは良さそうだが面倒くさそうな性格をしてそうだ。気が強いお嬢様とかテンプレだな。


「どのような関係と言われてもなぁ。……遊び仲間?」


「まあそんなところよね」


 俺が答え、楠木が肯定すると何故かお嬢(笑)が噛みついてきた。


「あなたが楠木さんを変えたのですね!弱っているところにつけ込むとはなんて卑劣な!」


「何の話だ?」


「惚けないで下さい!ご両親がお亡くなりになる前と後で彼女は変わりました!あなたが何かしたんでしょう!」


「あ〜そういうことか…」


 側から見れば性格が変わった時期辺りから接するようになった人物は怪しいだろうなぁ。


「とりあえず声がでけぇ。こんな人が大勢いるとこで両親が亡くなったとか言うもんじゃないだろ」


 楠木は気にしないかもしれないが、ここは道の真ん中だ。空気と化しているが西条達だっているんだ。でかい声で話すことでもないだろ。


「そ、それは申し訳ありませんでした…!だからと言ってあなたの所業を許す理由にはなりません!楠木さんを元に戻しなさい!」


 彼女の中で俺は何をしたことになっているのだろうか?


「まずあんたの言う元の楠木ってどんなんよ?」


「楠木さんは清楚で可憐で穏やかでお淑やかで誰からも好かれるような淑女でした!今の楠木さんは楠木さんじゃありません!」


 誰だよそれは。そして今の楠木を全否定。楠木の方を見ると明らかに苛立っている。


「それ演技だって言ってなかったか?」


「あれが演技な訳ないでしょう⁈」


 楠木は演技派だったみたいだな。楠木の演技力を褒めるべきか騙されていたお嬢(笑)を憐れむべきか悩んでいると楠木に手を引かれた。


「もうそいつの相手しないでいいよお兄さん。それより今日も家に来るの?」


「いや、今日は…」


「まだ話は終わってませんわ!それより家ってなんですの⁉︎まさか楠木さんの家に入り浸っているのではないでしょうね⁉︎」


「どういうことなの蓮夜!咲夜ちゃんが蓮夜がほとんど家にいないって言ってたけどまさかその子の家に行ってたの⁉︎」


 楠木が今日はどうするのか聞いてきたらお嬢(笑)だけじゃなく、今まで空気だった藤林も反応した。楠木に視線を向ければ気まずそうに視線を逸らされた。


「蓮夜はその子と付き合ってるのか?」


「いや、付き合ってるわけではないが…」


 成り行きを見ていた西条がそう聞いてくるので答えると藤林達はさらにヒートアップした。


「嫁入り前の女性の家に入り浸るなんて不潔です!いったいどんな弱味を握ったんですの⁈」


「結局蓮夜とその子はどんな関係なの⁉︎答えて蓮夜!」


「弱味を握ってるわけじゃねぇし、楠木とはただの遊び仲間だって言ってるだろ」


 なんなら楠木の家では互いに好きなことをしているのでろくに遊んですらいない。


 これから遊びに行く途中だったのでその日はそれで引き下がったが、結局納得出来なかったのか後日改めて話すことになった。





 特に説明することなんてないんだけどなぁ。

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