第35話 夏休みの日記なんてほとんどでっち上げ
8月31日 晴れ
今日は夏休み最終日だ。この日の学生の大半は最後の休みだとハメを外すか、明日から二学期が始まると憂鬱になるか、終わらない課題に絶望するかのどれかではないかと思う。俺は憂鬱になるタイプ。窓辺に座って澄み渡る空を見上げながら、世界が終わる日もこんな天気のいい日なのではないかと黄昏ていた。明日からまた頑張ろう。
そこまで書いたら日記帳を閉じる。
「よし、日記はこれで終わりだ」
「本当に全部書いたのですか…」
妹の咲夜がなんとも言えない目で見てくるが気にしない。
「毎日日記なんか書いていられるか。ちゃんと毎日書く奴なんていないだろ」
「まあ私も後から何日かまとめて書きますが、先に書いたら日記と言わないのでは?」
「世の中には未○日記という言葉があるからいいんだよ」
漫画みたいにこれから起こることが書いてある訳ではないけど。
「……山や海に3回ほど行ったと書かれているのですけどご予定が?」
俺の日記をパラパラ見ていた咲夜がそう聞いてくる。
「そんな予定はない。日記のネタなんてそうないからな。適当にあってもおかしくないことを書いただけだ。どうせ担任教師もまともに見ないんだから何回か同じようなこと書いてもいいだろ」
本当にあったことを書くなら夏休みの日記なんて一日中ゲームしてたとか何もなかっただけになるわ。
「そうですか…」
何故か咲夜が落ち込んでいる。咲夜が開いてるページには家族で海に行ったと書かれている。行きたかったのだろうか?
「かゆ…うま…って書かれているページもあるのですが?」
「さっきも言ったが日記のネタなんてそうないから日記の定番のネタを書いてみた。ウケ狙いってことで見逃してもらうことを期待している」
ちなみに10日くらいはネタ。そうでもしなければマジで書くことが思いつかなかった。
「…………」
咲夜が呆れた目をしている気がするが無視。
「思いつかないならなんで初日にかいたんですか…?」
咲夜が言うように今日は夏休み初日でまだ7月だ。俺は夏休みの課題は休みの最初の方で全部終わらせて残りの休みを気兼ねなく遊ぶタイプ。次は現代文の課題でもやるか。
「兄さん、ここを教えて欲しいのですが」
「ああ、ここは…」
咲夜も俺に影響されてか夏休みの課題をやっている。俺の部屋にエアコンがないからリビングでやっているが咲夜も同じかな?まだ午前中なのにエアコンがないと暑くて課題なんか手につかない。温暖化よ止まれ。
「…………」
「…………」
しばらく無言で課題をやり、時折咲夜の質問に答える。
「ここはこの公式を使えばいい」
「ありがとうございます兄さん。……そろそろ休憩しましょう。お茶を淹れてきます」
「ああ、頼むわ」
時計を見ると結構な時間が過ぎていたが、課題も順調に進んでいる。このままなら7月中に終わりそうだな。
「はい、兄さん」
「ありがとう」
咲夜の淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。
「……先程の日記ですが」
「ん?」
お茶を飲みつつボーっとしていると唐突に咲夜が口を開いた。
「日記に書いてあることがほとんど虚偽であるのはやはりよくないので、書くネタを作る為にに一緒にお出かけしませんか?」
やはりお出かけしたいのだろうか?咲夜なら出かける相手には事欠かないと思うのだが。そう思いつつ外を見る。
外を歩いている人達はみんな汗をかいて辛そうにしている。7月でこの暑さだと8月になったらヤバいのではと思う今日この頃。もう外に出る気なくなるなこれは。
だが珍しく咲夜が誘ってきたしなぁ。
「……気が向いたらな」
結局俺はそう答えた。こう言う奴はそのままだと気が向くことないから半分以上断り文句だけど。
「はい、その内お出かけしましょう」
具体的な日にちを決めないってことは咲夜も分かってんのかな?まあ本当に行きたいならまた提案してくるだろ。
そういや楠木との関係を説明しろとか言ってたお嬢(笑)はどうすんだろ?連絡先分かんないだろうに。
まあどうでもいいか。
俺は頭を切り替えて再び課題に取り組んだ。
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