第28話 地雷じゃなくて時限爆弾

「邪魔するぞ」


「あっ、いらっしゃいお兄さん」


 本日も楠木の家へ。今更だが一人暮らしの女の子の家に入り浸る男ってヤバくない?女の子が一人暮らしの男の家に転がり込む話はよくあるが逆はあまりない。家出少女が一人暮らしの男と同棲を始めるのはラブコメの予感がするが、男女を逆にすると犯罪臭がするからだろうか?


 家出少女を家に泊めるのも下手すれば監禁扱いされるけど。


 どっちがマシなんだろうかと考えつつソファに座る。テストが近いので勉強道具を取り出しつつ楠木の方をチラリ。


「………」


 楠木の学校もテストが近いからか勉強しているようだが、イライラしているのか貧乏ゆすりをしている。おこなの?


「機嫌が悪いのか?」


「そうよ」


 直球で聞いてみたら端的な答えが返ってきた。勉強してて分からないところがあるからイライラしてるって訳じゃなさそうだから学校で何かあったな。


 何があったか聞く気はない。わざわざ地雷を踏みに行く必要はないだろう。


 ただ今日の夕食は少し豪華にしてやろうかなと思っていると楠木が爆発した。


「あーもうイライラするっ!勉強が手につかないじゃないっ!」


「地雷じゃなくて時限爆弾だったな」


 踏まなくても爆発されたらどうしようもなくない?


「ムシャクシャしてんならゲームでもやってストレス発散したらどうだ?」


 叫ばれると勉強に集中できない。まだゲームの音をBGMにする方がマシだ。テスト前だが今のままだと勉強にならなそうだから気晴らしは必要だろう。


「…そうね、気晴らしでもしましょうか」


 そう言って前に俺が持ってきたソフトを漁る楠木。


「とは言ったもののどれが面白いのか分からないのよねー。あっ、これは確か有名だったはず」


 そう言って楠木が手に取ってのはBlood ○orneだった。





 おいバカやめろ。













 一時間後




「………」


 そこにはソファで不貞寝する楠木の姿が。


「だからやめとけって言っただろうが」


「………」


 あれはストレス発散にやるゲームじゃないって。むしろストレス溜まる。最終的に悟り開けそうになるけど。


「とりあえずメシでも食え。そんで別のゲームするなり勉強再開するなりしろ」


「………」


 楠木は無言で起き上がって席に座った。そして俺の作った料理(チーズinハンバーグ+ポトフ)をガツガツと食べ始めた。女子としてその食べ方はどうなん?


「…まあ気晴らしにはなったわ。学校で嫌なことあったけど今なら許せ…いや、やっぱ許せないわ」


「そうか。愚痴くらいなら聞くぞ?」


「元友人が最近絡んでくるのよ。その娘が私のすることにあれこれ口を出してくるの。やれ淑女ならどうとか、他の生徒の模範としてどうとか。自分が正しいと思ってるのか私が何を言っても聞きはしないし鬱陶しいこと極まりない」


「面倒くさそうな奴に絡まれてんな。意識が高そうだ」


 その娘は善意で言っているのかもしれないが、その考えが受け入れられない人間にとっては鬱陶しいだけだ。


 詳しい話は分からんが、友人だったらしいし楠木とよりを戻したくてあれこれ世話を焼こうとしているのか?


「ようやく両親の束縛から逃れられたのになんで同級生にあれこれ口出しされなきゃならないのかしら?」


 よりを戻したくてもアプローチを間違えてたら距離は縮まらないだろうに。












「………」


「………」


 メシを食った後は互いに無言で勉強する。楠木は優等生を演じていただけあって勉強は順調そうだ。


「ふう…」


 キリのいいところまでやって時計を見る。そろそろ帰るか。


「そろそろ帰るわ。あと明日は来ないから」


「そう、分かったわ。おやすみ」


「ああ、おやすみ」








 明日は西条に誘われた勉強会だ。どうせなら有意義なものになればいいが。

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