第27話 そんな餌に釣られクマー
俺の机に落書きがされてからしばらく経った。あれ以来俺にちょっかいを出す奴はいなかった。名も知らぬ男子生徒が頑張ったのかな?
自爆覚悟で盗撮だなんだと騒がれなくてよかった。スケールは全く違うが核兵器を保有している各国みたいなものだし。抑止力として保有はしていても実際には使えないみたいなところが。もし使ったら互いにダメージを受けるからね。そのまま破滅へ一直線だから不干渉が無難。
ついでに俺の噂をしている人も減った。人の噂も七十五日。もともと冤罪だし、嘘も混じってたからな。まあ単に飽きただけかもしれんが。もしくは目の前の問題に気を取られているか。
「ここテストに出るからしっかり覚えておけよー」
あれから二か月ほど経ち暑くなってきた今日この頃。夏休み前の最後の試練、期末テストが近づいてきた。
「蓮夜!勉強会開こうぜ!」
「断る」
「なんでだよ⁉︎」
本日は金曜日。授業が終わり帰ろうとしてたところに西条がそんなことを言ってきた。
「勉強会なんて結局遊ぶだけになるだろうが」
昔はよく幼馴染と勉強会をしたものだ。まあ俺と藤林と宮本はわざわざそんなことしなくても成績はそれなりに良かったので、もっぱら相川の為にしていたんだが。だが最初に遊びだすのも相川だった。誰の為にやってんだと当時は思ったものだ。
「真面目にやるって!それに遊ぶことになったとしてもそれはそれで青春の一ページって感じじゃん!」
「勉強する気ないじゃねぇか」
最初から遊ぶのが目的になってないか?
「つーかお前は勉強会なんて必要ないだろ」
こいつの普段の様子を見ていると授業に着いていけなくて困っているという雰囲気はない。小テストなんかも高得点だったはずだ。
「いや、中学の時に比べて科目も増えたからな。高校最初のテストだし勝手が分からん」
「それもそうか」
中学の時に比べて科目が増えたし、最初のテストなのでどの程度のレベルの問題が出るか分からない。真面目に勉強する必要があるだろう。中学の時に真面目にやっていなかったわけではないが。
「だがそれこそ一人で真面目にやったほうがよくない?」
「得意不得意な科目があるだろ。そこをフォローし合おうぜ」
「でもなぁ…」
俺がまだ渋っていると西条がニヤリと笑った。
「蓮夜、勉強会に参加してくれたら購買の優待券をやるよ」
「参加する」
そんな餌に釣られクマー。
「よし、蓮夜は参加っと」
「お前優待券で俺が釣れると思ってない?」
釣られてるけど。
「思ってないって。んじゃ俺は他の奴にも声かけてくる」
そう言って去っていく西条を見てふと気付く。
「あいつの優待券って前に貰ったからもうないんじゃないか?」
球技大会の他に優待券が手に入る機会はなかったはずだが…誰かに貰ったのか?
まあ貰えるなら何でもいいか。
蓮夜の机に落書きがされてからしばらく経った。予想と違ってあの日以来イジメのようなことは起きなかった。あの日の口振りからして蓮夜が何かしたんだと思う。
俺は責任を感じて問題を解決しようとした。だが実際は何も出来なかった。何もする必要がなかったとも言える。
あの日以来何も起きず、噂の方ももともと冤罪や嘘だったせいかいつの間にか消えていた。
蓮夜の味方をするという俺の意思など意味がないかのように。
蓮夜との友人関係は続いている。ほっとくと誰とも交流しようとしない蓮夜になにかと話しかけたり、遊びに誘ったりしている。蓮夜が遊びに参加することはほとんどないが。
なあ蓮夜、俺はお前のことを友達だと思っている。もっと俺を頼ってくれよ。迷惑をかけて、かけられて、互いに助け合うのが友達ってものだろう?何でも一人でやらないでくれよ。
他の人の助けなど必要ないと言わんばかりの蓮夜にいつか俺の声は届くのだろうか?
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