第25話 今度は絶対に間違えない

 最近の学校ではよく蓮夜君の噂を聞く。球技大会の後は蓮夜君の凄さを褒め称えるようなものだったが、今は痴漢し、それを揉み消したという悪意に満ちたものだ。


 称賛から一転、蓮夜君を貶めるようにみんなが手の平を返す様はかつてを思い出す。


(蓮夜君はどう思ってるんだろう?)


 私はまだ蓮夜君とろくに話すことすら出来ていないが、彼はクラスメイトと遊びに行くようにもなったらしい。


 だけど今回の噂でまたみんなが蓮夜君から離れていけば今度こそ誰も寄せ付けなくなるかもしれない。今は普通に接しているが、人を見限って一人で生きていくことも考えられる。


 誰だか知らないけど余計なことをしてくれた。冤罪に加え、嘘も混じっているから信じない人もいるとは思う。だけど同調圧力は恐ろしい。信じてはいなくても周りに合わせる人がいるかもしれない。かつての私達のように。今思い出しても弱い自分が嫌になる。


 それに蓮夜君がイジメられるようになるかもしれない。多くの人から負の感情を向けられている蓮夜を自分勝手な正義を掲げて排除しようとする人がいる可能性がある。


 かつてイジメられていた記憶が蘇る。あの頃は毎日が辛かった。学校にも行きたくなかった。だけど私には味方がいたし、あの時は蓮夜君がなんとかしてくれた。


 蓮夜君はかつての私と違って泣き寝入りなんかしないだろう。弱い私とは違う。もしイジメられるようなことがあってもすぐに解決するかもしれない。


 誰にも頼らず一人きりで。


 昔私がイジメられていた時はどうやったか知らないが、蓮夜君が一人で解決した。だから蓮夜君が誰かを頼ることはないかもしれない。それでも味方がいた方がいいと思う。少なくとも私は味方がいてくれたから耐えられた。


 少なくとも瑠璃ちゃんは蓮夜君の味方をすると思う。蓮夜君のクラスメイトの西条君もなんとかしようとしているらしい。だけど仮に私だけだったとしても私は蓮夜君の味方をする。それで蓮夜君からの信頼を取り戻せるとは思っていない。贖罪になるとは思わないけどそうすることに躊躇いはない。


「今度は絶対に間違えない」











 たとえ蓮夜君自身からは味方だと思われてなかったとしても。

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