第24話 よくない雰囲気
「よくない雰囲気だな…」
俺、西条明は最近の学校の様子を思い返してそう零す。
球技大会の翌日から噂されるようになった話がある。それは蓮夜が過去に痴漢をしたというものだ。
その話は俺も知っている。当時別の学校の司令塔が痴漢したと噂になったものだ。だがそれは冤罪だったと聞いている。しかし今流れている噂は
「学校が全国まで行った選手のために冤罪ということにした」
「脅迫して女子生徒に自白させた」
「金で揉み消した」
などと言われている。普通に考えればそんなことあり得ないと思いそうなものだが
「冤罪ならなんでサッカーをやっていない?」
「サッカー部に勧誘されても入らないのは罪悪感があるからだ」
と言われて信じる者もいるみたいだ。ウチのクラスにもそう話している奴がいる。
「ちっ!」
思わず舌打ちしてしまう。こうなる原因を作ったのは俺だ。球技大会に俺が蓮夜を無理矢理引き入れたからだ。
もちろん蓮夜に謝ったのだがあいつは
「別に謝ることでもないだろ。ニュースになったのは事実だし。つーか誰にどう思われようがどうでもいい」
と気にもしていないようだった。あまりに危機感がないので誰かが直接何かをしてきたらどうすると心配したが、蓮夜の反応はあっさりしたものだった。
「それならそれでいい。高校生になってもそんなことする奴がいるならな」
何もされないと楽観視して何かされたら泣き寝入りするつもりかと思ったが、蓮夜はそんなタマには見えない。そう聞いてみると案の定だった。
「当たり前だ。泣き寝入りなんかする訳ないだろ。目には目を、何かされたら戦争だ」
何をするつもりか聞いたがそこははぐらかされた。暴力を振るうつもりかと危惧したがそうではなさそうだ。
「別に暴力を振るうつもりはない。つーか喧嘩なんてしたことないし」
ますます心配になったが、蓮夜はすでに手は打ってあるという。念の為だとは言うが何をしたんだ?
ほっといても大丈夫な気もするが、だからと言ってこの事態を静観するつもりはない。
蓮夜が何をするつもりか分からないが、他人にどう思われるか気にしない奴だ。結果としてさらに回りから敬遠されるようになるかもしれない。それは避けたい。
とりあえず協力者を集めて噂を流している奴を特定することから始めるか。
「蓮夜、お前は回りにどう思われようが気にしないのかもしれないが、お前が悪く言われることを気にする奴もいるんだぞ」
ここにはいない蓮夜に向けてそう零し、協力者を集めに行く。
蓮夜が俺からもどう思われようがどうでもいいと考えてる可能性から目を逸らして。
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