第14話 日曜の夕方って憂鬱になるよね

「さあーて来週の○ザエさんは?」




 日曜の夕方になんとはなしにテレビを付けたらテンションがガタ落ちした。


 いや、○ザエさんは長年多くの国民に親しまれ、知らない人はいないんじゃないかってくらい有名なアニメだよ?俺も昔は毎週欠かさず見ていたものだ。


 だがいつからだろう。あのセリフを聞くと「ああ…もう休みが終わるのか…」と考えるようになったのは。学校に半ば遊びに行っているようなものだった小学生の頃はともかく高校生の現在、あのセリフは呪いの言葉に等しい。


 早い話が○ザエさん症候群である。ついでに言えば現在は四月だが、昨日クラスメイトと遊びに行って精神的に疲れたのか、今日一日何もする気がおきなかったので五月病にもかかったかもしれない。


 今まで風邪くらいしか引いたことがなく、俺の体は丈夫だと思っていたが、よく考えると○ザエさん症候群や五月病の他にも中二病や高二病に罹患していた気がする。何科にいけば治療してもらえるのだろうか?


 クソほどどうでもいいことを考えていると妹の咲夜に声をかけられた。


「兄さん、そろそろ夕食ができますけど食べます?」


「作ってくれたのか。いただくわ」


「はい、分かりました」


 ゴロゴロしていたら夕食のことを忘れていた。妹の手を煩わせて申し訳ない。どこかに食べに行こうかと思ってたが、作ってくれたのならいただくとしよう。


 両親?社畜って大変だね。


 どことなく嬉しそうに料理をしている妹の背中を眺める。甘えん坊だった咲夜も立派になったものだ。月日は人を成長させるものだが、俺は成長しているのだろうか?


「………」


 している訳がない。○ザエさん症候群で五月病で中二病で厨二病で高二病とかダメ人間じゃね?なにか増えているのは置いておいて、今よりはガキの頃のほうがマシな気がする。


「…はぁ」


 思わず溜め息が出る。


「…兄さん?」


「ん?」


「あの…夕食できたんですけど…」


「ああ、ありがとう。運ぶわ」


「ありがとうございます…」


 妹の手料理などいつ以来だろうか。







 今日は兄さんが珍しくリビングにいたので思い切って一緒に夕食を取ることにしました。少し浮かれながら料理を完成させ、兄さんを呼びに行くと溜め息を吐いている兄さんが。


(やっぱり私と一緒に夕食を取るのは嫌なのでしょうか…?)


 浮かれてた気持ちが一気に冷めました。伺うように声をかけてみるとそこにはいつもの無表情。


 あの日から変わらない表情を見ていると自分の罪を意識します。反抗期だったとか兄さんを傷付けたのは自分だけじゃないなどとは言っても私の罪が消えることはありません。


(兄さんは私の事をどう思っているのでしょうか?)


 嫌っていたり恨んでいるのならばまだいい。まだ仲直りをすれば距離を縮める余地が残っているから。だが無関心だけはやめてほしい。もう距離を縮めることが出来ないから。


 かつてのように談笑しながら食事をすることはまだできない。








 久しぶりに咲夜と二人っきりで食事をした。いつの間にか咲夜の料理の腕前は上がっていたようだ。花嫁修行は順調らしい。


「………」


「………」


 同じ食卓を囲んでいるが、俺達に会話はない。だが思春期の兄妹ならこんなものだろう。


「あの…美味しいですか?」


「ああ、うまいよ」


 ぎこちなくも会話をしようとする咲夜だが無理をしなくてもいいのに。料理を作ってくれただけでも感謝してるんだ。勝手に食えとばかりにラップして机に置いておくだけでも俺は気にしない。


 やはり別々に食べるほうが互いの為ではなかろうか?






 誰か思春期の妹の接し方を教えてクレメンス。

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