第8話 飾られない小物に意味はあるのか?

「…捨てた?」


 突然やってきた藤林を部屋に入れ、振ってきた話題に答えたら何やら唖然としているでゴザル。


「ああ、本が増えすぎてな。本棚を置くスペースを作るためにいらん物を捨てた」


 今まで溜め込んでいたものを思い切って断捨離したら結構な量になったので、朝から家とゴミ捨て場を何度か往復することになった。


「いらん物って…。サッカー用品やメダルは思い出の品じゃないの?」


「もう使わない物やメダルなんかの使い道がないような物を取っておいても邪魔なだけだしな。それに誰かにそれを見せながら、俺は昔は凄い奴だったとか昔は良かったなんて言い出したらただのイタイ奴だろ?」


 サッカーを続けているのならともかく、過去の栄光に縋るのは情け無いだろう。


「…じゃあみんなで買ったお揃いの小物なんかは?」


「高校生が持つにしては幼稚な物も多いからな。実際俺しか飾ってなかったじゃん」


 幼馴染達の部屋には何度も入ったが、みんな飾ってなかった。とっくに捨てたと思ってた。どこかに保管してあるのかもしれないが、飾られない小物に意味はあるのか?そもそも存在自体忘れられていそう。







 蓮夜の部屋を後にした私はフラフラしながらも自室にたどり着き、ベッドに倒れ込む。


「蓮夜にとって過去はいらないものなの…?」


 そう力無く呟くが答える者はいない。




 しばらく倒れ込んでいたが、体を起こし机の引き出しを開ける。そこには幼馴染みんなで買った小物などがあった。


 蓮夜はずっと飾っていたが、私は汚れたり、傷付くのが嫌で大事にしまっていた。他の二人も同じだろう。


 私はその内の一つを丁寧に取り出し、抱き締める。


「私達は捨てたりしないよ、大事にしてるよ蓮夜…」




 目から零れた涙が手に持つ小物に当たった。

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