第7話 断捨離
本屋で買ってきた新刊を読み終わり、本棚に入れようとするがスペースがない。
「参ったな…。もう本棚に入らないぞ」
部屋を見渡すが新しい本棚を置くスペースもない。
「しょうがない。いらないものを捨ててスペースを作るか」
俺は物を捨てれなくて溜め込む人間だったが、ここは思い切っていらない物やもう使ってない物は全部捨ててしまおう。断捨離だ。
俺は部屋の片付けを始めた。
「久しぶりね咲夜ちゃん。お邪魔します」
「お久しぶりです、瑠璃さん。どうぞお上がり下さい」
今日は休日だが、蓮夜とちゃんと話がしたくて咲夜ちゃんに連絡を取って家に押しかけた。
昔は私にも懐いてくれていたが、久しぶりに会った私を見る目は複雑そうだ。
(無理もないか…)
兄を傷付けた人間が目の前にいるのだ。断罪されてもおかしくないが、そのようなことはなかった。
「私に対して怒ってないの?
「私も同罪なので怒る資格はありません…」
気になって聞いてみるとそのような答えが返ってきた。どうやら彼女も兄を傷付けてしまったらしい。
お互いに気まずく思いながらも話を続け、しばらくして私は本題を切り出した。
「蓮夜はいる?」
「今はいますよ。朝から何か作業しているのか部屋で物音が聞こえたり、何度か外出しているようでしたが」
入れ違いにならなかったことに安堵しながら咲夜ちゃんに断りを入れて蓮夜の部屋に向かう。扉の前に立つと今更躊躇う気持ちが生まれるが、意を決してノックをする。
「どうぞー」
葛藤する私とは違い何も考えてなさそうな声が聞こえる。
(女は度胸!)
躊躇う気持ちを捻じ伏せて扉を開ける。
「お邪魔するわよ、連夜」
「藤林か。何か用か?」
名前ではなく、苗字で呼ばれたことに顔を顰めるが、何とか声をだす。
「話がしたくて…」
「?まぁ入れよ」
いきなり話がしたいと押しかけられて蓮夜は首を傾げているが部屋に入れてくれ、促されるままに椅子に座る。
「それで?何の話がしたいんだ?」
「えっと…」
いざ面と向かうと言葉に詰まって久しぶりに入った蓮夜の部屋に視線を彷徨わせる。記憶にある部屋とは様変わりしている。昔と同じなのは机やベッドくらいで、部屋は本でいっぱいになっている。昔はサッカーのボールやユニフォームが置いてあったり、大会で貰ったメダルや幼馴染みんなで買ったお揃いの小物が飾ってあったがなくなっている。
「久しぶりに部屋に入ったけど様変わりしたわね。サッカー用品や飾ってあった小物なんかはどうしたの?」
言葉に詰まってつい口に出してしまった。本題の前の世間話のつもりで。緊張をほぐすための会話で
「あぁ、本棚を置くのに邪魔だったから全部捨てた」
私は言葉を失った。
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