第6話 冷めきった料理

 今日は兄さんの高校の入学式です。お祝いに気合いを入れて料理を作りましたが、そろそろ19時になるのにまだ兄さんは帰って来ません。


「入学式は半日で終わるのに遅いですね…」


 事件以来兄さんは自分のことは自分でやるようになってしまいました。贖罪のつもりで家事をやろうとしても自分で行ってしまいます。今日くらいはと料理を作りましたが今だに帰って来ません。何かあったのかと心配になりましたが玄関の開く音がして安堵しました。


「おかえりなさい。遅かったですね、ご飯出来てますよ」


 帰って来た兄さんにそう言うが


「ただいま。悪いな、メシは外で済ましてきた」


「そ、そうですか…。では明日のお弁当のおかずにしますね?」


「そうしてくれ。あぁ、俺の分の弁当は作らなくていいぞ。学食があるからな。やはり高校生になったなら学食を経験しなければ。もしくは購買戦争」


「……」


 そんなことを言いながら自分の部屋に向かう兄さんを見送って席に着く。ノロノロと箸を持ち、兄さんに美味しいと言ってもらいたくて頑張って作った料理を食べる。


「美味しくない…」


 兄さんと談笑しながら食べるつもりだった料理を一人で食べる。


「美味しくないよ…。お兄ちゃん…」


 気合いを入れて作った料理は自分達の関係を表すかのように冷め切っていた。








「あの喫茶店は当たりだったな」


 新刊を読み終えたら夕食に丁度いい時間だったのでパスタを注文した。美味しいかった(小並


 コーヒーやケーキも美味しかったし、店内も落ち着いた雰囲気で読書が捗った。常連になりそうだ。


「しかし咲夜には悪いことをしたな」


 俺の分まで作っているとは思わなかったが。


 一つしか違わないとはいえ中学生に家事をさせるのは気が引ける。だが年頃の女子中学生の咲夜は俺の作った料理なんか食べたくないだろう。掃除や洗濯なんかもっての外だ。


 ならばせめて咲夜の負担にならないよう自分のことは自分でやるとしよう。今までと同じように。

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