第2話 一緒に洗濯しないで!は男性特効

 今日から高校生だ。中学の時にいろいろあって、俺はなんとも思っていないのだが、家族が気まずそうにしているので、一人暮らしをしようとしたのだが、許可が出なかった。


 特に妹が大反対してきたが、そんなに信用がないのだろうか?これでも家事は一通りできる。俺が痴漢冤罪を受けている頃は両親とも忙しそうにしてたし、妹は反抗期で自分で家事をすることが多かった。


「兄さんの洗濯物と一緒に洗濯しないでください!」と言われた時は流石にショックだった。世の中の父親は思春期の娘によく言われるそうだが、十代で父親の気持ちが分かるとは…。ちなみにウチの父親は妹が小学生の時に言われている。


 世の中の父親について思いを馳せながら教室に入り、席を確認して座る。ちなみに廊下側の一番後ろだった。すると前の席に座っていた男子生徒が話しかけてきた。


「何か考えているようだけどどうした?」


「世の中の父親に思いを馳せていた」


 はぁ?と疑問符を浮かべる男子生徒を観察する。爽やかそうな見た目でモテそうだ。爆ぜろ。


「入学式当日に今後の学生生活ではなく、世の中の父親について考えるなんて面白い奴だな!」


 なんか知らんがケラケラ笑っている男子生徒が手を差し出してくる。


「俺は西条明だ。よろしくな」


「月読蓮夜だ。よろしく」


 俺が手を握りながら返すと西条は何やら驚いたように聞いてくる。


「もしかして蓮夜ってサッカーやってた?」


「いかなり名前呼びか。まぁいいが。サッカーなら昔やっていた。中二でやめたが。知ってるのか?」


「まぁな。この辺でサッカーやってた奴なら知っているんじゃないか?」


 自分で言うのも何だが、俺はサッカーが上手かった。中二の時はチームの司令塔として全国に導いたという自負もある。もう昔の話だが。


「高校でもサッカーやるのか?なら一緒に国立を目指そうぜ!」


「悪いがもうサッカーをする気はない。他のチームメイトと一緒に目指してくれ」


「なんでだよ。怪我でも…」


「蓮夜!」


 俺と西条が話している所に声を掛けてきたポニーテールが特徴の女子がいる。幼馴染の一人の藤林瑠璃だ。


「今サッカーって聞こえてきたけど、またサッカーやるの?なら私はマネージャーやるから一緒に…」


「いや、サッカーはやらん。つーか部活に入るつもりはない」


 なにやら捲し立てていた藤林を遮って俺は言う。


「なんでよ!あんなにサッカー上手だったし、熱中してたじゃない!」


「昔の話だ。今はやる気がかけらもない」


 何か言いたそうな藤林を見ながらさらに続ける。


「それに部活なんかやっていれば自由時間が少なくなるからな。本を読む時間が減る」


 今の俺の趣味は読書だ。中学時代に孤立した時に一人でも楽しめるものを探した結果そうなった。今では空いた時間は大抵読書をして過ごしている。


 「こらそこ、入学式当日から修羅場ってないで席に着け」


 まだ何か言おうとした藤林だが教室に入ってきた教師に遮られて席に戻っていく。


 担任の教師の話や自己紹介を聞き流しながら今日の予定を考える。今日は授業もなく早く帰れそうだから、本屋に寄って新しい本を買い、喫茶店でも探してそこで読書をしよう。文学少年らしい行動だな。ホームルームが終わると同時に教室を出る。廊下側の一番後ろの席だとすぐに教室を出れていいな。

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