おばあちゃんと初めてのカップラーメン

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第1話緑のたぬき

あれはまだ私が小学1年生の頃の話です。


共働きの両親の仕事が忙しくなり、冬休みに面倒を見てくれる人がいないのでその間だけ、おばあちゃんとおじいちゃんが私達兄妹の面倒をみる為に家に泊まりに来てくれました。


車の運転も自転車も乗れないおばあちゃんの代わりに買い物だけは両親が済ませておき、その食材を使っておばあちゃんがご飯を用意してくれる事になっていましたが、その日は買い物前で食材がほとんどありませんでした。


おじいちゃんはサッカーの習い事をしていたお兄ちゃんを送りに行ってしまい、家には私とおばあちゃんだけ。


おばあちゃんは何かないかと家の中を探すとカップラーメンが二つ出てきました。


それは緑色のパッケージの「緑のたぬき」だったのです。


その時まだ低学年だった私はカップラーメンでさえ作った事がありませんでした。


火を使う事はもちろん、お湯も危ないと言われていたので大人がいない時はキッチンに入らせて貰えなかったからです。


そしておばあちゃんもカップラーメンと言うものをその時まで食べた事が無かったのです。


説明の漢字の読めない私と、文字が小さすぎて読めないおばあちゃん。


カップラーメン初心者の二人は緑のたぬきを前に固まってしまいます。


恐る恐る二人で中を確認するとビニールに包まれたかき揚げに袋に入ったスープの素。

下にはカラカラの硬い麺。


「おばあちゃん、まずはお湯だよ!」


私がそういうとおばあちゃんは鍋でお湯を沸かします。


「それでどうするの?」


おばあちゃんはお湯が沸騰して火を止めるとこちらを見つめます。


「たぶんお湯を入れてスープ入れればいいんだよ。それで…」


私の手にはかき揚げ…


「これも入れるんだね!」


当時あと乗せなど知らない私は先にかき揚げを入れてスープを入れるとおばあちゃんがお湯を注ぎます。


そしてお湯の線を知らない私達は並々までお湯を注ぎました。


「あとは五分待つだけだね!」


この時私は蓋を全部剥がしていました。

蓋を閉めて五分とは知らず、開けたまま五分待ちます。


何も知らないおばあちゃんと五分待って食べた「緑のたぬき」は薄いスープにドロドロに溶けたかき揚げの麺が硬めのカップラーメン。


でも初めて自分で作った料理のような気持ちで私達は美味しい美味しいとそれをたいらげました。


「簡単で美味しかったね」


二人でお腹いっぱいになり満足気に笑い合いました。


その後、本来の味を食べて衝撃を受けたのも今となってはいい思い出です。

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