第7話真実はどこに!?

テンションは最悪だけど、神宮寺さんを待たせるわけにはいかないので準備を始める。

朝ご飯を手早く食べ、片付けて身だしなみを整える。神宮寺さんに見られたボサボサの髪や目の開ききっていなかった顔をいつもの通りの自分に変えていく。


「よしっ!これで完璧!!」


部屋の鏡で隅々までチェックし、急いで神宮寺さんのもとに向かう。

さっきの記憶消えてないかなぁ、はぁ恥ずかしすぎる・・・。

靴を履き玄関の鍵を閉め、家の前に止まっている黒の車に近づき控えめに窓を叩く。


トントン、、、


仕事をしていたのか神宮寺さんは書類に目を向けていたけどすぐにこちらに気づいてくれ車から降りて来てくれた。


「お待ちしておりました。

お声かけありがとうございます。」


「いっ、いえ、こちらこそお待たせしました。」


「いえ、これも仕事ですので。

では、屋敷へ送らせて頂きます。」


昨日と同様にスマートに助手席まで来て扉を開けてくれる神宮寺さん。ドキッとしながらも席に着き、神宮寺さんも乗り込んでくる。


「車を走らせますが、昨日の疲れもあるでしょうし寝ていて構いませんので。」


「あっ、そんな!送って貰うのに寝るなんて…。」


「仕事ですし、麗さんとの約束ですから。」


笑顔でさらっと言う神宮寺さんがカッコよ過ぎてドキドキが止まらなくて、何か気を紛らわせようとどうでも良いような事を話してしまう。


「昨日は神宮寺さんゆっくり休めましたか?私あの後車で寝ちゃってお父さんにベットまで運んでもらったんです、はははっ。」


自分の報告なんてどうでも良すぎて思わず乾いた様な笑い方をしたけれど神宮寺さんはちゃんと答えてくれる。


「ふふっ、私もぐっすり眠ってしまいました。ですが疲れている麗さんを朝から呼んでしまい申し訳ありません。」


「いや、全然大丈夫ですよ!!

まぁどんな話されるのか不安ですけど…。」


少し俯きながら答えてしまう。疲れてはいるけど朝から神宮寺さんと会えた事は嬉しい、でも雪君達が何を考えてるのか分からなくて怖いのも事実。私の不安を和らげるように神宮寺さんは優しく話してくれた。


「今日は会長夫妻が麗さんに感謝を伝えたいとの事でお呼びしたと聞いております。

なので昨日の様にお話し合いをする訳では無いと思いますよ。」


「なんだ、そうだったんですね。

てっきりまた三兄弟と話さないとかと思っちゃいました。」


「えぇ、なのでそんなに不安にならないで下さい。何かありましたら私を必ずお呼びください、絶対に麗さんの傍に行きますので。」


神宮寺さんの言葉は心強い、安心するなぁ。

不安はまだ少しあるけど大分マシになった、神宮寺さんには感謝しかない。


「神宮寺さんありがとうございます!

私、今日も頑張れそうです!!ふふっ。」


「いえ、お心遣いありがとうございます。」


その後は2人共言葉を交わさず、静かだけどゆったりとした空間で時が経つのが早く感じた。あっという間に門に着き玄関前に車をつけてもらう。やはり神宮寺さんは助手席の扉を開けてくれ、何だかくすぐったい気持ちになりながら車から降りる。

神宮寺さんに会釈をしデジャブだなと思いながら歩き、扉を開けお屋敷の中へ入ると皆藤さんをはじめとする使用人の方達と両親の姿があった。


「麗、さっきぶり。

もうあんた大層気に入られたみたいよ。」


「母さん、そんな事言わない。

麗、ごめんな。父さん達も良く分かってないんだが会長夫妻がお待ちだそうだ。」


嫌そうな顔をしているお母さんに困った顔をしているお父さん。2人共私程じゃないけどあんまり知らされていないみたい。


「分かった、そんな話長引かないと思うしちゃちゃっと行ってくるよ。」


「麗様、ようこそおいで下さいました。

私が案内致します。」


昨日ぶりの皆藤さんに促され、父と母に見送られ会長夫妻の元へ向かう。


「昨日はありがとうございました。

坊っちゃま達が機嫌よく朝を迎える事が出来たのは麗様のおかけです。」


「そうなんですか?大したことしてませんよ、あはは。」


「私は今日もまた麗様に会えて嬉しく思っています。ぜひお話が終わった際にはお茶の準備を致しますので、私をお呼びください。」


一緒に歩いていた皆藤さんはニコッと笑いお茶のお誘いをしてくれた。特に用も無いし、何しろ昨日のお茶菓子が美味しかったのでそれをご褒美に話し合いを新たに頑張ろと思えた。


「ぜひお茶したいです!!」


「お誘いして良かったです、準備してお待ちしております。

そして、こちらが会長夫妻のお部屋になります。」


皆藤さんが扉に近づきノックをする、入室の許可を貰うのだろう。


トントン、、、


「お休みの所失礼致します。

私皆藤、麗様をお連れ致しました。」


「あぁ、入りなさい。」


「はい。」


皆藤さんは扉を開けてくれ、私を優しい笑みで送り届けてくれた。


部屋に入ると会長夫妻に私の祖父母、次いでに三兄弟までもが揃っていた。

えっ、こんなに人居るって聞いてないんですけど…。


「おぉ、君が麗ちゃんだね?」


「…。」


「うっ、うぅん。」


おじいちゃんの咳払いが聞こえハッとする。仮にも私は音笠家の人間、ここで失礼をしては家族に迷惑がかかってしまう。

体の向きを会長夫妻の方へ向け挨拶をする。


「はい、お久しぶりです。

音笠家の長女、麗でございます。」


「ははっ、流石お前の孫だ、しっかりしておる。」


「お褒め頂きありがとうございます。」


挨拶は上手くいった様でほっとする。ふと視線を三兄弟に移すと雪君と春君は私を見てニヤッとしており、陽に関しては不機嫌な顔で外を見ていた。


「昨日はうちの孫が迷惑かけたね。」


「えぇ、一生懸命麗ちゃんが説得して下さったんでしょう?」


会長夫妻からの言葉にんっ?となる。

確かに迷惑をかけられたし大変だったけど一生懸命説得はしてませんが??

私がポカンとした顔で黙っているのを不思議そうにしながら会長夫妻は孫の三兄弟から聞いたことを口にする。


「孫達が言うには、跡取りという立場で不安になりわがままを言った自分達を理解し立ち直らせてくれた恩人だと聞いているが…。」


「それに麗ちゃんの様な人の元で残りの学生生活を過ごせたら有意義で勉強になるって言ってたわ。」


あれ、昨日の出来事はそんな青春アニメみたいな事起きてない。私はゆっくりと三兄弟を見た、雪君と春君はすました顔をし陽はどうでも良いという顔。

お前ら絶対嘘言っただろ~~~!!

なんか凄い良い人になっちゃってんじゃん、あんたらのお守りさせられそうな雰囲気なんですけど!?


神にでも祈りたかったがそんな暇なんて無かった。


「それで麗ちゃんには孫達をよろしく頼みたい!」


「こんなに孫達の事を思ってくれるなんて嬉しいことだわ、うふふ。」


いーやーだー、絶対無理!!

でも祖父母の手前下手なことも言えず。


「あは、あはは。」


壊れた人形の様に私は愛想笑いが止まらなかった。

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世界一嫌いな三兄弟に教育的指導始めました! 花見 はな @secret-garden

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