第3話おもてなしとバトル開始5分前

花の彫刻があしらわれている玄関の扉を開くと、使用人の皆さんが出迎えてくれた。


「「「お待ちしておりました、麗様」」」


大勢の人にお辞儀されることなんてないからびっくりしてしまい、声や動きがぎこちなくなってしまう。


「えっと、その、お久しぶりです…。」


余程ぎこちなかったのか一人のメイドさんが私の近くに来て説明してくれる。


「申し訳ありません、こんなに大勢で出迎えてしまい驚かせてしまいましたね。

私共、麗様と久しぶり会えるということで少々浮かれてしまいました。」


「いっ、いえ!!久しぶりのお屋敷でびっくりしちゃっただけです。

お出迎え嬉しかったです!ありがとうございました!」


お礼を伝え靴をスリッパに履き替えると部屋へと案内される。だが案内してもらった部屋は私一人と使用人の皆さんだけで不思議になり問いかけた。


「あの、私の両親や祖父母はどちらに…?」


「えぇ、音笠家の皆様はお二階にいらっしゃいますよ。

ですが、裕美子様より麗様はこちらに通すよう言われましたので少々お待ちください。」


「あっ、わかりました~。」


また、お母さんだよ~。ちゃちゃっと終わらせて帰ろうと思ってたのに・・・。

意気消沈になってしまった私に使用人の皆さんは優しくそしてしっかりもてなされてしまった。


「麗様、お茶菓子お持ちしましたので休憩されてはいかがでしょうか?」


「麗さま~、寒くなどありませんか?途中まで徒歩だと聞きましたので足のマッサージいたしますよ!」


「あら、お召し物に汚れが着替えの用意いたしますか?」


まだ部屋に入って10分程なのにこのもてなされようでビビってしまう。お茶菓子だけ頂くことにしてあとはやんわり断った。特にすることもなくぼーっとしていると玄関でも話しかけてくれたメイドさんが来てくれ、話し相手になってくれた。


「麗様、お久しぶりでございます。本日は来てくださりありがとうございます。」


「全然暇だっただけですし。」


「私寿々成家のメイド長をしております皆藤と申します、よろしくお願いいたします。」


「いえ、こちらこそお願いします!」


「今回は坊ちゃま達のために申し訳ありません。

ですが坊ちゃま達は麗様に会えることを楽しみにしております。」


「えっ、そうなんですか?私めちゃくちゃ嫌われてた気しかしないですけど…。」


「麗様がお可愛いからつい意地悪な態度を取ってしまったのかと。

本当は皆さん麗様のこと気になってしかたないんだと思います。」


「でも意地悪が過ぎました!!だから、お屋敷にも三兄弟にも近づかなかったのに。」


「それは坊ちゃま達に代わり謝罪いたします。私共は麗様に来ていただけるのが嬉しかったのですが。」


「あっ、その、今日の態度次第でまた来るかもですしそんな悲しい顔しないでください!!」


「それは本当でございますか!?ありがとうございます。」


私の言葉を嬉しそうに聞き、そのまま皆藤さんは部屋から出て行った。私がお屋敷に来るのがそんなに嬉しいのかな?でも正直もう来たくない、こんなに良くしてもらえて嬉しいけどあの三兄弟とは本当に関わりたくないからだ。皆藤さんと話している間に他の使用人の皆さんは違う場所に行ったようで部屋には私一人だけだった。早く用事を終わらせたいような、会いたくないような感情に悶々としていると皆藤さんが戻ってきた。


「お待たせいたしました。お二階の準備が出来ましたので案内致します。」


やっとだが私の緊張はマックスになる、少し震える体を動かし皆藤さんの後をついて行く。ゆっくりと階段を上った先には両親と現当主夫妻がおり私を見るや次々に話しかけてくる。


「れーいー、送迎の事ごめんなさいねぇ。でもちゃんと来れて良かったわ。」


「麗、母さんがごめんな。父さんも連絡すれば良かったな。」


「麗ちゃ~ん、バカ息子達がごめんなさいねぇ。私がちゃんと出来なくてぇ、うぅ。」


「いや、母さんのせいではないだろ。麗ちゃんすまないね、もう君にしか頼れなくて…。」


両親は相変わらずだが、現当主夫妻は相当ショックを受けているようで疲れ切った顔をしている。


「もー、お母さんちゃんとしてよ!色々大変だったのよ!

って、それにしてもおじさんもおばさんもどうしたの?」


「いやー、まぁご子息達が色々言い放ったみたいでな。

反抗期が来たって思ったらしくあんな感じなんだ。」


「もうほんとムカつくわよ、あのバカ三兄弟…。

お母さん手が出そうで大変だったんだから。」


いやいやおじさん達の前でバカは言っちゃダメでしょ、でもほんとに手出す気だったのかよ。それにしても、今更反抗期な訳がない小さい頃から酷いことも平気で言えるしやるような悪党三兄弟だ。ただおじさん達にはそんな一面出さないで良い子のフリしてたから余程ショックなんだと思う。


「はぁぁ、で、うちはなにすれば良いの?三兄弟と仲良のお悩み相談でもすれば言いわけ?」


「それが麗を呼べとしか言われてないんだ。理由を聞こうとしても無理でね。」


「なにそれ??んー、あいつらとまともに話せる気しないんだけどなぁ。

あっ!でも、手加減しなくて良いって許可くれるなら多分話せるけどどうかな?」


「おっ、良いこと言うじゃん。当主達にはママから言っとくから、ママの分までやって来い!」


「いや、母さん?俺も話聞いてるからね?」


「あなた、もうこれしかないんだから私に合わせる。」


「はぁ、麗あんまり手荒なことするなよ。」


「りょーかい!」


こうして母が溜めに溜めたストレスを利用し、暴れてもいい許可を貰えた。お母さんがなんて言ったのかは知らないけれどおじさん達は喜んでくれ私にお礼を伝えてくるほどだった。


「麗ちゃん、幼馴染として助けてくれるなんてありがとう。

あいつらのことよろしく頼むね。」


「やっぱり麗ちゃんが居ないとダメね…。

後でまたお話しましょ、うぅぅ。」


そんなに感謝されてしまうと暴れにくいがいろんな人の気持ちを背負ったからか、緊張など無くなりわがまま三兄弟が陣取っている部屋へ向かった。


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