爆発を阻止したければ、ご機嫌を取ればいい
俺の親父は国が抱えるほどの天才科学者であり発明家であることは知っていた。ただ、口数の少ない人であるのと秘密保持の観点から仕事に関しての言及はほとんどなかった。
まさか、漫画世界のような研究に手を出しているとは夢にも思わなった。
「なるほど。この動画の通りなら、キミの核分裂はどすれば止まるんだ?」
「お兄ぃさんがアタシの身体を鎮めてくれればいいだけだよぉ♡」
「しっ、鎮めるって!」
「アタシとゲームをして遊んでくれればいいんだよ?―—んぅ~、あれ~、お兄ぃさんってば何か勘違いしてたのかなぁ♡」
「べっつにーーー」
「お兄ぃさんったらスケベなんだから♡」
「はいはい、それで、何のゲームで遊ぶんだ?」
そう尋ねると、彼女のお腹からぐぅ~という可愛らしい音が鳴った。
「――そのまえにアタシお腹空いちゃった~。何か食べる物なぁい?」
壁掛け時計に目を遣ると、時刻は12時を回っていた。
「……それじゃあオムライスでも作るか」
「わーい!オムライス大好き!」
アマテラスはキャッキャッと歓喜の声をあげる。その表情に思わず笑みがこぼれる。こんな喜ばれるなんて思わなかった。こんな子が体内に原子炉を宿しているなんて馬鹿げた話が無ければ妹に欲しいぐらいだ。
*
「ご飯も食べたし、そろそろあたしと遊んでよ」
食事を終えた幼女は意気揚々と俺を見つめる。これだけ見ればただの小学生だ。
「お兄ぃさんが得意なゲームでいいよ」
「得意なゲームなんてなぁ。ゲームなんてほとんどしないし……」
思い浮かべたのはスマホに入っている育成ゲームだった。対戦ゲームなんて家に置いていない。
「じんせいげーむっていうのはある?」
「そんなものは――――」
あるわけないと言いかけて口を閉じた。たしか半年ほど前、世話焼きな幼馴染が様子を見に来て、暇つぶしとして人生ゲームを持ってきたのだ。
「アイツ、また来るとか言って置いて行ったような……」
スマホのライトを点灯させてタンスの中を漁る。どの電子機器に使うか分からないコードやらパソコンの箱やらを掻き分けると奥に緑色の大きな箱を見つけた。
「あったぞ。これだ」
蓋を取るとゲームに使用するお金や車、ルーレットが顔を見せた。
「へぇ~、聞いてた以上に面白そうじゃん」
説明書を手にとったアマテラスはニコニコしながらページをめくっている。
今更な話ではあるが、2人だけでは面白味が欠けるような気もする。まあ細かいことはどうでもいいか。この女子小学生のご機嫌を取って核爆発を阻止すればいいのだから。
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