7話 アリス戦③
アヴァロンの城にて。アリスはユリとアルマを探すフリをしていた。
彼女達は必死に隠れている。魔力感知で位置がバレているとも知らずに何とも間抜けなことである。
アリスは探しているフリをしながらユリ達を少しずつ端の部屋へと追い詰めていた。迫り来る脅威にさぞ恐怖していることだろう。彼女達の顔を見るのが楽しみだ。
想像して楽しんでいると、ひとつの部屋の扉が開く。ユリが自分から姿を現したのである。
『ユリみーつけた。』
鎌をユリに向ける。ユリの表情は怖がっているものの絶望していない。何か策でも考えついたのだろう。
『…猫ちゃんがいないね。どこいったのかな?』
「アルマさんには助けを呼びに行ってもらいました。」
アルマの魔力は調和の力で感知できない。探しているフリに対し隠れているフリをされまんまとアルマだけを逃したようだ。
『…ふーん。器用だね。』
無意識に淡々とした声が出る。雑魚達に裏をかかれていたという事実が面白くなかった。
「アリス、あなたに精霊の勝負を申し込みます。」
『勝負?』
精霊との勝負。勝てば精霊を従えることができるというものだ。精霊は勝負を申し込まれたら受けなければならない。それが精霊の性質だった。
しかし、勝負と言われても具体的にどのような勝負をすればいいのだろう。アリスは黒い霧で人の生気を奪い自由に乗り移っていた。実は精霊の勝負をしたことがないのである。
だからなんだということだが。
『いいよ。どんな勝負にしよっか。』
「精神力で勝負です。私の体に乗り移ってください。私とアリス、どちらの精神が保つか勝負しましょう。」
『精神?ぷ…あはははははははははっ!』
アリスは腹の底から溢れ出す笑いを堪えきれない。何をするのかと思えばこの雑魚は自分の力量をわかっていないのだ。力で戦っても鎌を持っている自分相手に敵わない。だから精神力で自分に挑もうと言うのだ。
しかし、ユリは精神力も雑魚である。
「私が勝ったらアリス、貴方は自分の神殿に戻り封印されてください!」
アリスはユリの魂胆がわかりなお笑った。ユリの作戦とは勝っても負けても自分をシロナから引き剥がそうというものだった。勝てば自分を神殿に封印することができるし、負けてもユリが犠牲になるだけでシロナは助かる。まさに自己犠牲精神の強い雑魚らしい悪あがきという訳だ。
『あっはははははは!いいよ!それじゃ勝負だね!負けないよ、ユリ!』
アリスはシロナから離れ、黒い光の粒子となりユリへと移動する。解放されたシロナは精神が壊れているため力なくその場に倒れ伏す。
アリスがユリの体に宿った途端、ユリの精神は0.1秒も保たずに消えた。
『くすくすくすくす…かわいそうだね、ユリ。器用なだけで体力も筋力もないし魔法も使えない。おまけに精神力もないなんて。こんなに雑魚じゃ何のために生きてるのかもわからないね。』
アリスはユリの体で鎌を掴む。ユリにあった絶望をプレゼントするのだ。
まず、ユリの体を操って自分を犠牲にしてまで助けたかったシロナを真っ先に殺してあげよう。そして必死に逃したアルマも殺してあげよう。超絶不器用な彼女は城の階段のところで降りれずに困っていることだろう。アルマを殺した後は何食わぬ顔で仲間と合流し黒い霧で弱らせ一人ずつ殺してあげよう。
自分が犠牲になったせいで仲間が全員死ぬのだ。簡単に命を投げ打つ雑魚にしっかりと教えてあげよう。命は大事にしなきゃだめだよと。
倒れているシロナの元へ近づく。宿っていたから知っている。彼女は戦いが嫌いな兄をひとりで戦わせないために魔法を必死に鍛えた。努力を繰り返し何度も戦いに参加することで本当の戦闘狂になった。
その兄が妹をひとりにしないために同様に戦い続けることになるとは考えてもみなかっただろう。
とはいえ、魔法の才能も魔力も一流だった彼女の体は居心地の良いものだった。自分を宿すには魔力が足りないのでもう少しで肉体が壊れるところだったが。
『貸してくれてありがと。ばいばい。』
アリスは倒れているシロナへ鎌を振り上げた。
「にゃあ!」
ドアの裏からアルマが飛び出す。
『猫ちゃん!?逃げてなかったの!?』
『能力交換』
アルマは能力交換の魔石を使い、アリスと自分のある能力を交換したのだった。
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