2話 開戦
能力交換の魔石をロアから奪えたはいいがアルマが魔石を飲み込んでしまった。これからどうすればいいかエデンにはわからない。ユーキとアルマに目で訴えかける。
(ねぇ、どうすればいいと思う!?アルマそれ今すぐ吐き出すことできる!?)
(何と言ってるかわからんが失策であることは確かだ。)
「にゃあ。(言ってることはわかるけど吐き出すってどうやるんだっけ?食べるってどうしてたっけ?息の仕方もわかんなくなってきた)」
(とりあえず誰かロアに何か言ってよ!僕こいつとこれ以上話したくない!)
(何と言ってるかわからんが頑張れとしか言いようがない。)
「にゃあ。(言ってることはわかるけど何を言えば良いかな?にゃあでいい?)」
エデンはユーキとアルマと無言で堂々巡りをする。戦うことしか能のない不器用なメンツ。ほとんど進展しなかった。
その間にロアは悲鳴を止め眼鏡はないがかけ直す仕草をする。その時間はロアに状況を整理させるには十分だった。
「成程。あなた方にとってもどうやら失策だったようですね。私はあくまで誰の犠牲もなく平穏に魔力SSと青の魔法陣を頂こうとしていたのですが。残念です。第二の計画に移るとしましょう。と、その前に人質の意味はなくなりましたね。」
「ロ、ロア!?待ちなよ!」
「スコール。モンスターペンギン達の石化を解除してください。」
周囲のモンスターペンギン達の石化が解かれる。砕かれた状態から石化が解除されてはモンスターペンギン達が死んでしまう。エデンはペンギン達から目を逸らした。
--お、おはよー!
--違う!こんにちはだろー!
--夜じゃないしどっちでも良いんじゃないか?
--だな!
石化が解かれたモンスターペンギン達はペンペンと世間話をしながらマイペースにその場を去る。体は欠けておらず命を落とした者はいないようだ。
「どういうこと?」
「はぁ…成程。またあなたでしたか。随分と器用なのですね。この雑魚がッ!!」
ロアが忌々しげに吐き捨てる。何もない空間から返事をするようにユリが姿を現した。
「どうも雑魚です。アルマさんの姿を消す魔法です。あなたが私から興味を無くした隙にモンスターペンギン達の体を元に戻させていただきました。」
「やれやれ…どうやら私はまたあなたをみくびってしまったようですね。それなりに手立てを見つけるのは得意なようだ。雑魚呼ばわりは撤回致しましょう。」
「雑魚のままで結構です。私にとって褒め言葉ですから。」
「…成程。それがあなたと私の違いですか。」
ロアは素直に感心したようだった。
「雑魚のままでいいなど私には理解できませんね。力は際限なく追い求めるものです。雑魚である不甲斐なさを知っているならなおのこと、ね。」
エデンはロアの真意を図りかねた。まるでロア自身が雑魚であったような言い方である。食べたその者に成り代わる特性を持った魔物。その特性が生まれた理由とはそこにあるのだろうか。
「さて、どちらが正しいか試してみると致しましょう。アリス、ゲームを始めますよ。」
『はぁい。』
アリスの声が周囲に不気味に響く。
「アリスが来るよ!みんな用心して!」
アリスはどこに転移してくるのだろうか。周囲を見回すとユリがひとり離れていた。アルマとユーキがそこに向かう。
『防壁』
防壁の魔法が光りユリとアルマ、ユーキとエデンというように二手に分断される。ロアが自分を中心に丸く防壁の魔法を張っていた。その中にロアの部下達とエデンとユーキが含まれていた。
「何のつもりだ。」
ユーキがロアを睨む。
「全員を相手にすると少々都合が悪いのでね。そっちは任せましたよ。アリス。」
『うん。任せて。』
アリスが転移し姿を現す。ユリとアルマのいる方である。
『調和』
アルマがすぐにアレキサンダーの調和の力でアリスの魔力を無効化した。
『ふふ。魔力封じられちゃった。これじゃあ雑魚だね。』
アリスは魔力が使えず黒い霧も魔法も封じられた状況であるにも関わらず不気味に笑っている。
「アルマさん今のうちに転移で逃げちゃいましょう!」
「…にゃあ。」
アルマは首を横に振る。調和の力を発動すると自分も相手に吊り合わされる。つまり自分も相手同様魔力が無効状態になってしまう。しかも二時間程調和が発動するように設定してしまった。
とのことだ。
「え!?魔法が使えない!?二時間も!?アルマさんそれじゃ今雑魚じゃないですか!」
「にゃ!?」
他でもない雑魚なユリに雑魚呼ばわりされたことにアルマはショックを隠せない。
そう、アルマは調和の力により不器用で最強の魔法使いから不器用で魔法が使えない雑魚猫に成り下がったのである。
防壁内ではロアと50人の部下対エデンとユーキの強者による戦いが始まろうとしている。
その外ではアリス対ユリとアルマの雑魚による戦いが始まろうとしていた。
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