12話 足跡の謎
アルマのお墓のダンジョンにて。
ユリが過去に転移した後、ユーキはエデンとモンペンに外部の状況をどう伝えるか考えていた。
果たしてこれを聞いて正義感の強いこの勇者は堪えられるだろうか。エデンと目が合う。
エデンが両目でウインクを返す。
その瞬間この男のことで悩む時間も労力も全てが面倒になる。ありのまま伝えることにした。
「ロアと一戦交えた次の日のことだ。各街の冒険団に『一日一つの街を石化させる。勇者を差し出せ。そうすれば石になった住民を助けてやろう』といった書面が回っている。実際ある街が赤い雨に襲われていた。冒険団は血眼になってお前を探しているようだ。」
「はあ!?なにそれ最悪なんだけど!」
エデンはひどく動揺し立ち上がる。ダンジョンの出口に駆け出そうとしてモンペンの腹にぶつかる。
もふん
「わぶ!」
--おう、金髪小僧。トイレはあっちだぜ。
「そんな悠長なことしてられないよ!僕のせいでみんなが苦しんでるんだよ!?」
--ん?お前のせい?お前何か悪いことしたか?
「え!?モンペン何言ってるの!?僕の正体知ってるよね!?」
モンペンはもぺっ?とする。エデンはその反応に呆気に取られていた。
「落ち着け。敵の挑発にいちいち構う必要もないだろ。」
「だからって放置しろと言うの!?」
「誰の味方にも何者にもならない。俺達はそういうチームだ。」
エデンは言葉を失う。数度口を開きかけるが不貞腐れた面でその場に座った。なんとか自制できたようだ。仲間に加わる数時間前の勇者であれば独断で動きロアに青の魔法陣を奪われていたことだろう。
それにしても、周囲の冒険団を容易く操作し姿を隠している勇者本人へも情報が伝達すると踏んでいる。ロアはなかなかに機転の効く魔物のようだ。
ユーキは話を続ける。
「黒い霧も赤い雨の騒動に紛れて動いている。数カ所の人里離れた森林の生気が失われていた。」
「アリスがわざわざ人里離れたところを?何でだろう?」
エデンが訝しむ。その疑問は尤もだ。アリスは子供のように無邪気で残忍な性格である。街を避ける理由がない。
避けているのはアリスなのか。それとも何かがアリスを誘導しているのか。
人々の生気を奪い廃人化させるアリスと石化させる精霊を宿すロア。二人が連携すれば世界は10日と経たず崩壊するだろう。
それをしないところを考えるとロアとアリスは協力関係ではあるが各々の目的を持って動いているように思う。
ロアの目的はエデンとユリの能力を手に入れ最強の魔王となることである。では、アリスの目的は何なのか。
釈然としないことがもう一つある。
ユリが過去にアルマを助けに行ったが、アルマが生きているのであれば何故今姿を見せないのか。
ユーキはヒントを得ようと四つ葉のクローバーの手紙を広げる。
「言っとくけどアルマの物は普通に僕の物だから。君に一時的に預けてるけどこれは僕の物なんだからね。ちゃんと返してよ?」
謎な理論を並べるエデンを無視して考える。自分に気づかれないように手紙を入れるなど容易いことではない。できるタイミングとしてはスコールの神殿にてアリスに廃人化させられた時くらいだろう。
つまり、この手紙を上着に入れた本人はあの場にいたということになる。
そしてエデン曰く手紙に新しく押されている足跡。何かを伝えようとしているように思う。
「!」
「どしたの?」
「迎えに行ってくる。お前はここにいろ。」
「誰を?」と首を傾げているエデンを置いて、ユーキはモンペンと共にダンジョンを出た。
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