8話 魔法使いの謎②
ユリはサウナにいるエデンの元へ急いで向かっていた。自分が過去に忘れた手紙が猫の足跡が押されてここにある。何故それをユーキが持っていたのかは不明だが、これはアルマが生きている証拠。すぐにでもエデンに見せたかった。
サウナの扉を開けようとした時、ユーキに「待て」と手首を掴まれる。
「ユリ、少し落ち着け。よく考えろ。ここはサウナだ。」
「だから何ですか!?今すぐにエデンさんに伝えたいんです!離してください!」
ユリは習ってもいないのに小手抜きをしてユーキの手から器用に抜け出す。そして、サウナ室の扉を開けた。そこには全身を赤くしたエデンが朦朧とした様子で座っていた。
「……ア…いや、ユリちゃんだね…。ごめん、もうちょっと待ってね…あともう少し…あともう少しだから…。」
放たれた熱気と汗の蒸発した臭いに思わず口元を覆う。エデンは汗を絞り切ったかのようにかいてない。どれだけここに入り浸っているのだろう。もう少しというのは何だろう。三途の川でも渡るつもりなのか。
「…エデンさん、これを見てください。」
ユリはエデンにアルマの手紙を開いて見せる。
「え、それ!?アルマが大事にしてた手紙!?なんでそこにあるの!?足跡が加わってる!?どうゆうこと!?」
エデンは意味がわからず混乱しているようだ。ユリはこの手紙の意味を告げる。
「アルマさんは生きてる可能性があります。」
「………アルマは生きてる?」
エデンは信じられないというように手紙を凝視する。紛れもなくアルマが生きている可能性を物語っている。
「うそ…」
バタン!
エデンは不意に倒れる。腰に巻いていたタオルが宙を舞った。
ユーキが急いでユリの目を覆った。しかし間に合わなかった。
エデンが回復し次第、一行は大部屋で話をすることになった。ユリも布団をかぶり参加する。その様は人間にセクハラをされいつでも殻に籠れる備えをしているカタツムリである。
「私達のいる今が過去に行ってアルマさんを助けることも組み込まれているかもしれないんです。つらいでしょうがアルマさんが死んでしまう時のことを全部教えていただけませんか?」
「…うん、わかった。でも、その前にお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」
エデンが目線を合わせてくる。またセクハラをされるのではないかと、布団の中に急いで隠れる。
「な、ななななななんですか!?」
「僕を君達の仲間に入れてもらえないかな?」
思いがけない言葉に布団の中で固まる。ユリ一行は勇者一行とすでに共同関係である。今更なんでそんなことをお願いされるのかわからなかった。布団からエデンの様子を伺う。
エデンは真剣に返事を待っている。立場が違う共同関係と志を共にする仲間。その違いは不器用な彼にとって大事なことなのかもしれない。
なんだか少し嬉しい。人々が称賛している勇者に対等であると認められているかのようだ。
「喜んで。」
ユリ一行に勇者が仲間に加わった。
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