7話 魔法使いの謎①
布団から出た後、ユリはユーキとモンペンと共にアルマの未来と自分達の未来の両方を選ぶ方法について考えていた。
アルマを助ける方法としては、魔王ディーンがアルマを殺すその状況をよく知り時の魔石を使ってその直前に『転移』する必要があった。それは魔王ディーンでもあったエデンの協力が不可欠である。しかし、この状況でエデンの協力を得るのは難しい。
モンペンの話では、エデンはあの後からサウナに篭りっぱなしだという。サウナの中から殺伐としたオーラが滲み出ておりモンペンですら近づきたくないようだ。
ユリは過去での出来事をユーキとモンペンに全て話した。ユーキは得心がいった様子である。
「成程。道理であいつとお前がよく似ていた訳だ。正体は猫だったのか。」
「?ああ、アルマさん、ユーキの前では私に変身していたんですね……ってちょっと待ってください!」
アルマが自分の姿に変身していた。それは見逃してはいけないことだった。
「それって私達の『今』は私が時の魔石で過去に行きアルマさんと変身を練習することまで組み込まれていたということですよね?」
「そういうことになるな。」
「じゃあ私がこれからアルマさんを助けに行くことも組み込まれていたりして…。」
途中で自分があまりに突飛した話をしていることに気づく。アルマの魂は今ユリにある。だからユリは魔力が高く才能のない器用な雑魚なのである。それはアルマが死んでいることを意味していた。
「つまりあの最強は今も生きているということか。」
ユリは思わず顔を覆う。ユーキへの罪悪感がすごい。矛盾だらけである自分の推測を不器用な彼は間に受けてしまっていた。
--俺が臭いで探してやるよ!
そこで不器用な鳥モンペンまで立ち上がる。ユリはモンペンにダンジョンの奥に引き摺られていった。アルマの遺品である魔法使いの帽子の臭いを嗅ぐためである。
モンペンが宝箱に入っている魔法使いの帽子を一生懸命嗅ぐ。ユーキも止める様子はない。臭いで見つけられる可能性などない。二人にはそれがわからないのだ。不器用だから。
「ユーキ、モンペン、本当にすみません…。私だけが器用で…。」
「何故謝る?」
「なんとなくです…。」
何故自分だけがこんなに器用なんだろう。何故二人はこんなに不器用なんだろう。何故自分の器用さを二人に分けてあげられないんだろう。ユリはずっとそんな悲しいことを考えていた。
モンペンはくるっとユーキを向く。
--見っけ!
「…お前、俺を忘れたのか?」
モンペンはユーキの上着を嗅ぐ。
--いや、弟の中だ!
「…?」
ユーキは上着の懐を漁る。
小さく折り畳まれた手紙が出てきた。
古ぼけた四つ葉のクローバーの手紙である。
「「!?」」
ユリとユーキは驚愕する。
--それと同じ臭いだ!
モンペンは自信満々である。
その手紙を開くと猫の足跡が一つ押されていた。
自分にはアルマの魂があるはず。それにより、彼女は死んでいると思っていた。しかし、彼女の臭いがする手紙が何故かここにある。それが意味することは一目瞭然だった。
「アルマさんは生きてる!」
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