3話 黒いペンギン
ユリが過去に転移するのを見送った後のこと。
ユーキはアルマのお墓のダンジョンにてエデンとモンペンを目の前に悩んでいた。
ダンジョンのボス青龍の話ではこのダンジョンは封印されているため、場所を認知されにくいとのことだ。
ロアやアリスの対抗策が見つからない当面、狙われているユリとエデンはここに身を隠し、魔力が少なく感知されにくい自分が外部の視察に動くことが望ましいだろう。
しかし、ここで問題がある。
ユーキはエデンの脇腹を突っついてみる。「あふん」と軽く反応するものの上の空のままである。
エデンが使い物にならない。
こんな状態の雑魚がここにいて果たして何ができるのか。こんな雑魚に過去から疲れて戻るだろうユリの介抱を任せられるのか。むしろ疲労困憊なユリがこの雑魚を介抱するような事態にならないか。
ユーキは上の空な雑魚ともぺっとしたモンペンを見比べる。
モンペンに乗って視察に行こうと思ったが、多少の危険を冒してでもこの雑魚を連れていくべきなのか。
モンペンかエデンか、究極の選択である。
「モンペン、ここに残ってユリのことを気にかけてやってくれ。そこの雑魚の面倒も頼む。」
--よっしゃ!任せろ!弟よ!
結果、ユーキはどちらも選ばなかった。
モンペンに乗れば楽に移動できるが仕方ない。今日はこのダンジョンには戻れないだろう。
ダンジョンの出口に向かっていると、同様に出口に向かう黒いペンギン、ペン子と鉢合わせする。
--おや?君も外に行く時なのか。
「どこに行くつもりだ?」
--なに、そろそろ群れに戻ろうと思ってな。家族達が心細い思いをしているだろうからな。
ペン子は群れに帰るらしい。これ以上協力するつもりはないのか。ユーキにとってペン子は謎の鳥である。異様な記憶力、そしてこの落ち着き様。
どう考えてもモンペンの兄には当てはまらない。
出口に共に向かう道中、ユーキは釈然としない違和感を投げかけることにした。
「聞きたいことがある。」
--何だね?
「過去で魔力が切れたらどうなる?」
--過去には魔力があるだけ滞在することになる。魔力が切れ次第肉体は未来への帰還を強制されるはずだ。
「成程。それでお前は何故そんなに詳しいんだ?」
時の魔石は伝説級の宝と言われるだけあり人前に現れるものではない。
にも関わらずペン子は時の魔石を知っている。それも詳細に。
--私は少しばかり記憶力が良いものでな。
「何故記憶力がいいんだ?」
ペン子からピリッとした空気が放たれる。
それは敵意であった。それ以上聞くなと暗に伝えているようだ。
--そういえば私も聞きたいことがあった。君は何故ユリをそばに置いているのかな?
「…別に。」
あっちが勝手に着いてきているだけだ。そう答えようとしてやめる。それが答えではない気がした。
--私には理解できない。君が何故君の危険な旅に雑魚な彼女を連れ回しているのか。
「…何が言いたい。」
異様な雰囲気に距離を置く。
--大切なら壊れないように閉じ込めてしまえばいい。そう思わないか?
ペン子はにんまりと笑いその場から去っていった。
一つはっきりした。
ペン子はモンペンの兄ではない。その立場を利用している別の何かだ。
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