19話 逃亡生活の始まり①
ユリ達一行とエデンは黒い霧から逃れ、アルマのお墓のダンジョンへ身を隠すことになった。マイとボドーの石化は解除することができないため、ダンジョンの奥に二人を隠した。
着いて早々、一行は伝説級の宝『時の魔石』を取り出す作業を行う。
「やだぁぁやめてください!おえ…やだ!やだぁぁ!」
--がんばれ、お嬢!ひっひっふーだ!
少女の悲鳴とペンギンの応援する声がダンジョンに響く。
ユリはユーキに両足を掴まれ宙吊りにされ、エデンに口に指を突っ込まれえずかせられていた。
--おお、なんということだ…。
モンペンの兄は離れたところでドン引きしている。
その後も、色々と試行されたが魔石が出てくることはなかった。
今までユリ一行と勇者一行で分かれて動いていた。ユリ達は打開策を探すべくそれぞれ持っている情報を共有することにした。ユリは蒼白な顔をして毛布を被りながら参加する。
ユーキが何かするつもりかこちらに手を伸ばしてきた。触れてほしくなく「むぎー!」と威嚇する。その姿は人に傷つけられ人間不信となった雑魚な海牛である。
「…それであの魔石はなんなんだ。」
ユーキがエデンに話題を振る。
「能力交換の魔石が自分の能力とロアの隠し持っていた『時の魔石』の能力を交換したみたいだね。僕達は能力交換の魔石を奪われたけど、伝説級の宝『時の魔石』を手に入れられたんだよ。」
ユリは布団の中で整理をしながらみんなの話を聞く。
エデンの話では、時の魔石は過去に転移し魔力があるだけ滞在できる、自分や他人の運命を変えることができる強力な力らしい。飲み込んでしまったユリ個人にしか使えず、数日で消えてしまうとのこと。
「あの口ぶりだとロアにそれを渡したのは上位の精霊『アリス』なんだろうね。なんのためかはわからないけど…。」
アリスはロアをお兄ちゃんと慕い助けにきた。虚無の女王『アリス』は黒い霧にて生気を奪う能力を持っており、その力は建物や魔法の防壁でさえすり抜けるため回避不可と言われている。
「成程、時の魔石を使って、ロアは過去でスコールを手に入れたんだな。」
ユーキの話では、石化の精霊スコールの神殿は何年も前に廃れているように見えたとのことだ。ロアが過去に行ったのであれば、赤い雨の出没が最近であるにも関わらず、スコールの神殿が何年も前に廃れていたという辻褄が合う。
「でもなんで精霊スコールの力を手に入れるため、ロアは過去に行ったのでしょう?」
精霊スコールの力がほしいだけなら別に過去に行かず今攻略すればいいように思う。
--それは私がお答えしよう。
モンペンの兄がぬっと話に割って入る。黒く大きな体でお腹だけ白い羽毛、そしてつぶらな瞳。仙人のような口調とは裏腹に可愛らしい見た目だ。
「あ、アレキサ「やぁペン子、久しぶり。覚えてる?エデンだよ!」
モンペンの兄はエデンの知り合いでペン子という名前らしい。初対面であることを忘れテキトーな名前で呼んでしまうところだった。
--違う、私はペン子ではない!私はア「何かご存じなんですか?」
モンペンの兄、ペン子は咳払いをして話し始める。
--始め、5年前にスコールの神殿は攻略されていたのだ。今回の時間軸では6年前に攻略されている。ロアが誰かの手に渡る前に奪ったのだろうな。
「何でそんなことがあなたにわかるんですか!?」
--私は少しばかり記憶力がいいのでな。
ユリは意味がわからずにペン子を見る。別の時間軸のことまで知っている。明らかに記憶力がいいの範疇ではない。そして、ペン子には何十年も生きてきたような貫禄が感じられた。これが本当にあのモンペンの兄なのか。
「それじゃ、上位精霊『アリス』の対抗策について何か知ってますか?」
ペン子は「キュ?」と首を傾げる。とぼけた顔はモンペンとほぼ一緒である。ペン子はやはりモンペンの兄だった。
その後、一行はロアとアリスの対抗策について考えるが疲労困憊な頭では良案が出てくることはなかった。続きは明日としひとまず体を休めることにした。
ダンジョンでの宿泊はこのダンジョンのボスである青龍に申告する必要がある。
一行は青龍がいるボス部屋へ向かった。
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