26話 アルマの戦い①
アルマは最強の魔法使いであるが不器用な猫である。
何故こうも不器用で失敗だらけなのか。それは過度な自己否定によるものである。
自分が殺さないことで誰かが誰かを殺す。自分が不器用なために誰かが不幸になる。
その自責の念が、思い込みがアルマを萎縮させ不器用にしていたのだった。
しかし、今、エデンが白い光の剣を振るい続けているのを感じる。それは大勢の敵を前にエデンが殺さずに戦っていることを意味していた。
自分の存在がエデンを変えた。自分の存在がエデンに人を殺させない。
それは自己否定だらけのアルマを確かに肯定するのだった。
◆
グレイはシロナとロアと共にセントラルから離れた地点に『転移』させられていた。周囲は防壁が丸く張られており逃げ道を封じているようだ。
その中央にアルマがちょこんと座っていた。魔法使いの帽子を目深に被っているため表情は見えない。
妹シロナの周囲にバチバチと電光が走り始める。
「あなた、ほんと良い度胸してるわね...。エデン様の膝に我が物顔で座って...エデン様の服の中に入れてもらって...!」
「くそがぁぁぁ」とシロナは雄叫びを上げ敵意を示す。周囲に舞う電光が激しさを増す。相当キレている様子である。
「落ち着いてください。相手は最強です。ここは手を組み彼女を倒すのを優先するとしましょうか。」
ロアは眼鏡をかけ直す。まるでアルマの少しの動きも見逃さないというように睨みを効かせている。
グレイはやや体が重かった。
「...わりぃな。手加減はできないタチでな。降参するなら今のうちだぜ。」
三対一。このような不利な状況であるにも関わらずアルマに動じた様子はない。目深になっていた帽子をくいっと直すと、その瞳が露わとなる。
その瞳には、魔法陣の紋様が怪しく光っていた。
「...ッ!?」
その異様な姿にグレイは息を呑む。改めて認識させられた。自分達が今対峙しているのは不器用な猫などではない、
かの最強の魔法使いアルマであると。
『魔力吸収』
「「「!?」」」
グレイ達の地面に見知らぬ魔法が光る。じわじわと魔力が吸い出される気持ち悪さに襲われる。殺さずを誓うアルマが魔法使いを無力化するべく発明した、オリジナルの魔法なようだ。
「しゃらくさいわね!」
シロナはすぐに反撃の姿勢を見せる。魔力切れを起こしては戦闘不能となる。早急にケリをつける必要があった。
グレイも息を合わせ同じ魔法を唱える。
『『雷』』
グレイとシロナは雷の魔法を集中して鍛えている。それ故に雷に特化した世界最強の雷使いになっているのだった。
最強の兄妹である自分達二人分の雷の魔法はかの最強の魔法使いアルマをも超える。それはモンスターペンギン達を前にした前回の戦いでわかっていることである。
恐らくアルマも何か対策を考えてくるだろう。グレイは警戒を怠らなかった。
しかし、アルマは避けるわけでもなく攻撃するわけでもなくその攻撃を座ってただ迎えた。
「アルマ、マジかよ!?」
かくして、グレイとシロナの雷の魔法がアルマに直撃した。
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