17話 冒険団にて

 エデン達は『ノース』の街にたどり着いた。街の中を回っていると巡回していた冒険団メンバーに声をかけられ、騒がれ、おだてられ、担がれるように冒険団の拠点へと連れて行かれた。



 冒険団拠点の一室にて。


「ああっ...!よくぞここまでっ...!よくぞ私の元までお越しくださいましたっ...!アルマっ!最強の魔法使いよぉぉぉぉ!!」


部屋に入るなり、茶髪で眼鏡をかけた男が声高にアルマに近づく。その前に一歩出て立ちはだかる。


「ごめん。なんとなく。」


「.......失礼しました。」


男は一気にテンションが下がったようである。ぼそぼそと低い声で話し始める。


「私はアヴァロンの冒険団の団長、ロアと申します。この冒険団では主に魔物の保護、研究をしており、魔物を討伐しようとする王国とは敵対関係にあります。この拠点が要塞のように広いのは王国軍の攻撃に備えるためなのです。この拠点が落ちることはまぁありえないでしょうね。」


「へぇー」と言いながら周囲を見回す。内から見ると簡素な造りに見えるが城壁は厚くできている。この部屋までも通路は入り組み、拠点の周囲は二重の鉄の防壁で囲まれていた。


落とすのがあり得ないと言われるとなんとなく落としたくなるのは魔王の性である。


(僕ならどうやって壊すかなぁ。上から隕石でも降らせるかなぁ。内側から爆破しようかなぁ。)


そのような物騒なことを考えているとは、ロアには知る由もない。


「単刀直入に申し上げます。冒険団の元につき、王国軍を制圧すべく共に戦って頂けませんか?」


「...。」


口癖を堪え沈黙する。先日人間を斬りアルマを苦しめたばかりである。簡単に答えられるものではなかった。


ロアのテンションがさらに下がる。


「近々、王国軍は魔物を一掃するべく最強の兄妹が率いる強豪な部隊を出陣させると聞きます。剣、槍、弓に秀でた手強い部隊です。我が隊は大勢の犠牲が出ることでしょう。何とぞお力を...。」


魔王である自分の配下にいる魔物は一部。それでも大勢の魔物を虐殺されると考えると苦い思いである。だからといってそれを止めるために人間を斬るのも躊躇われる。


「アルマ、君はどうしたいかな?」


エデンとロアはアルマに注目する。


アルマは首を横に振った。


「......は?」


ロアのテンションはどん底まで下がる。


「断る?今更何を言ってるんですか?あなた大勢の人間を殺してますよね?」


「えっ?」


エデンは咄嗟に自分のことかと振り返った。しかし、ロアは確かにアルマに向かって軽蔑を込めて言っている。


殺さずを誓うあのアルマが。不器用で失敗ばかりのこのアルマが。大勢の人間をすでに殺していた。とても信じられなかった。


アルマはその動揺を感じとったのか、視線を合わせずに俯く。


「はぁ...備えといて正解でしたね...。」


ロアはため息を吐きつつ指を鳴らす。瞬間、周囲に控えていた団員のひとりがアルマの首に『魔封じの鎖』を巻く。


その鎖はその者の魔法を封じるものである。


「!?ちょっと!アルマに何するの!?」


剣を抜こうとした時、アルマの首が鎖で締め上げられる。「にゃ...」とアルマが苦しげに呻いた。


「あのさ、死にたいの?」


剣から手を離しロアを睨む。


「手荒い方法となったことは申し訳なく思っております。しかし、あなた方に間違っても向こうの味方になってほしくないんです。協力すると誓うまで幽閉させていただきます。彼女が心配なら余計な抵抗はやめた方がいいですよ。」


腹の底から苛立ちを感じた。





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