14話 再会
アルマは温かい体温と鉄の臭いの中、目を覚ます。エデンの膝の上だったようだ。
「あ、おはよ、アルマ。」
「にゃ!?」
エデンを見て愕然とする。全身が返り血で赤黒く染まっているのである。そして近くに落ちている物を発見する。
人間の片腕である。
「...ッ!?」
アルマは自分が寝ている間に何があったかを理解しショックを受けた。自分が魔法を防ぐのを失敗したために、自分が不器用だったために、エデンにたくさんの人を斬り捨てさせてしまったようだ。
「アルマ、どうしたの?」
エデンはいつものようにキョトンとする。アルマが落ちている腕を凝視しているのを見て「あ、そっか」と笑う。
「君はそういうのだめって言ってたもんね。ごめんごめん、つい斬っちゃった。」
まるで悪戯が見つかった子供のように頭をかきながら軽く謝る。人を斬ることに本当に何も感じないようである。その無機質な様子に恐怖を感じた。
「あ、えっと、なかなか難しい状況で仕方なくて。大丈夫だよ、生きてると思うよ、たぶん。」
エデンはしどろもどろに取り繕うとする。その顔には未だ不自然に笑みが貼り付けられたままで、それが一層アルマを怯えさせた。
「アルマ、大丈夫?」
「にゃあっ!」
血で汚れた手が近づく。アルマは恐怖のあまり後ずさった。
「アルマ、僕が、怖いの?」
エデンは初めて悲しげな表情となる。アルマははっと固まる。
「...そうか、僕が怖いか、そうなんだね...。」
エデンは距離を置き項垂れる。まるで逃げ道を開けてくれているようである。
ふと3年前に夜の国で会った銀髪の青年を思い出す。ここで自分が離れてしまうとエデンも一人ぼっちにしてしまう気がした。
彼が手を汚した原因は不器用な自分にあるのである。彼は悪くない。震える足に力を入れて近寄った。
ぺろ
その顔に付いた血を舐めとる。血の味が広がっていく。
「あっ、だめだよアルマ、汚いよ!」
エデンは慌てて止めようとするが構わず顔をなめ続ける。その顔が悲しみに歪む。
「......アルマ...ごめんね...こんなことさせて...。」
それは自分のセリフである。アルマは返事の代わりに顔に付着している血を舐め取り続けた。
怯えた目でアルマを見つめる。
「ねぇアルマ、君は僕と、まだ一緒にいてくれるの?」
「にゃあ。」
アルマはエデンに擦り寄った。恐怖が拭えず体は震えてしまっていた。
「......っ。」
エデンに無言で抱きしめられる。血の臭いが強かったが、抱きしめる腕はとても優しく心地良いものだった。
ペン子はそんな二人をもぺーと見つめていた。
ーーあと二年か。待ち遠しいな。
ペン子はキュウキュウ!と鳴き、モンスターペンギン達の群れへ帰っていった。
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