11話 モンスターペンギン達を守れ②
エデンとアルマはモンスターペンギン達を守るべく、最強の兄妹であるグレイとシロナと対峙した。アルマは地面にちょこんと座り、エデンは剣を鞘から抜かずに構えた。
グレイは拍子抜けした顔でそれを見る。
「お前ら、やる気あるのか?二人揃って随分と甘ちゃんだな。」
「本気を出すほどの相手じゃないだけだよ。」
グレイは「言ってくれるねぇ」と顔を顰め、シロナはクスクスとさも愉快そうに笑う。
グレイとシロナの片手に緑色の魔法陣が光った。緑色は上級の魔法使いであることを示している。
『『転移』』
グレイとシロナは自分達を左右から挟むように転移の魔法で移動した。
『『雷』』
二人は同じ詠唱を同時に唱える。鋭い雷の魔法が挟み撃ちをするように放たれた。
「にゃう!」
アルマがそれを同じく雷の魔法で受ける。しかし、敵の威力が強く凌ぐので精一杯だった。
グレイが感心したようにそれを見る。
「ほう、俺達二人の魔法を受けれるとは。さすが最強の魔法使い様だな。」
「ふふっ、それじゃ、そろそろ本気を出そうかしら。」
グレイとシロナが雷の力を増大させていった。
「にゃうぅぅ!?」
アルマの威力が負け、相手の雷が少しずつ両端から迫ってくる。
エデンはアルマが押し負ける前に雷の魔法を止めようとグレイの元へ走った。アルマに魔法で攻撃しているため、グレイは隙だらけだった。
グレイは「まぁそう来るよな」と笑い、もう片手に二つ目の魔法陣を出現させた。
「二つ目の魔法陣!?」
複数の魔法の同時発動。それができる者は上級の魔法使いの中でも相当な手練れであった。
『防壁』
グレイの防壁の魔法がエデンを丸く囲い、行く手を阻む。
魔法の防壁は魔力を込めた攻撃で破壊できる。魔力を込め、防壁に向かって3連撃、6連撃、12連撃と素早く剣を振るう。
しかし、防壁はびくともしない。
「!?...グレイ、魔力どれくらい?」
「Sだな。お前はAというところか。」
グレイは何ということもないというように答えた。
エデンは人間であるため魔力はA程度である。SはAの2倍ほどの魔力に匹敵する。そこまで差があるのであればグレイの『防壁』を剣撃で壊すのは不可能だった。
防壁から出れず、それを拳で叩く。
(これじゃあグレイに攻撃ができない。でも防壁に阻まれて向こうも僕に攻撃できないはず。先にアルマを倒すつもりなの?)
ふと自分の足元をみる。地面に緑の魔法陣が広範囲に光っていた。シロナもまた、もう片手に魔法陣を出現させていた。なんらかの魔法を発動するつもりなのである。
(…しまった!防壁に周囲を囲まれてても足元は空いてる!足元から攻撃するつもりだったのか!)
防壁に囲まれている自分に逃れる術はない。その魔法陣の範囲は広く、モンスターペンギン達の足元も含まれていた。
「アルマ、モンスターペンギンが危ない!」
「にゃう!」
アルマが雷の魔法を受けながらモンスターペンギン達を魔法陣の外に『風』の魔法で吹き飛ばした。
モンスターペンギン達はそれで攻撃を回避することができたが、自分達の防御は間に合わなかった。
シロナの『スタン』の魔法が発動した。
「ぐっ!」
「にゃあ!?」
全身に電撃が回り、エデンとアルマは倒れる。『スタン』は相手を痺れさせ体の自由を奪う魔法である。
モンスターペンギン達はアルマにふっとばされ慌てて逃げていった。それを見てグレイは舌打ちする。
「モンスターペンギンは逃げてしまったか。任務は失敗だな。でもまぁ、これで優秀な人材が二人も手に入った訳だ。良しとしよう。」
グレイが去っていくペンギン達から視界を移動させた時、視界いっぱいに黒くつぶらな顔が広がった。
黒いモンスターペンギンである。モンスターペンギン達が急いで逃げる中、近づいていたペンギンが一匹いたのだ。
「おお!?」
グレイは突然のペンギンドアップに意表を突かれた。
その隙に黒いモンスターペンギンはエデンをくわえその場から逃げ出した。アルマは倒れているままである。
「え、ちょっと待って、アルマを忘れてるよ、アルマはどうするの、ねぇ!」
黒いペンギンは必死なのか自分だけを咥え全力で走る。
エデンは逃げおおせることができたが、アルマはグレイ達に捕まってしまったのだった。
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