4話 最強の魔法使い


 アヴァロンの王国の一つの街、『ウッド』にて。


その最強の魔法使い、アルマは事情があり、街の動物カフェで働いていた。


アルマは白い猫であり、瞳は緑色である。ぶかぶかと被る黒いとんがり帽子さえなければ見た目はただの猫である。


猫は猫でも、人の言葉を理解し、幅広く魔法を扱う天才的な存在である。新たな魔法を発明する才能もあり、別名『創造の魔法使い』とも呼ばれている。ある事情から全ての命に対して殺さずを誓い、命を助ける旅をしていた。


そんなアルマは、アヴァロンの王国における魔王の宣告の噂を耳にしたため、様子を見にこの国にやってきたのである。


この街では動物が何者かに殺傷される事件が相次いでいた。アルマはその事件を解決すべく、一つの店にて潜入調査をしていた。


動物カフェでスタッフとして働くアルマに優しい顔をした男性客が近づく。アルマは慣れない接客を試みる。


「こんにちは!君、かわいいね!なんでこの子だけこんなに空いてるんだろ?」


「にゃあ!」


男性客と握手をしようと手を寄せる。


爪が男性客の手の爪の間にぶすっと突き刺さった。


「あああぁぁ!?」


男性客は悶絶する。謝罪のため、慌ててそれを舐めようとする。先程爪が刺さった部位に同じくさくっと牙が決まる。


「.........。」


もはやその客に動物好きの面影はない。白けた目をして速やかに店を去っていった。これで犠牲者は本日5人目である。


客を退けてしまうアルマは2日で動物カフェをクビとなり、路頭に放り出された。


「にゃあ...。」


アルマは落ち込む。ここをクビになってしまったら潜入できるところはない。


せめて屋根の上によじ登り街を見張ろうとする。しかし、何度試しても途中で足を踏み外し落下してしまう。受け身すらまともにとれない。


「にゃう!」


緑の魔法陣を手に出す。緑の魔法陣は上級の魔法使いであることを現している。魔法を使うことでようやく宙を浮き屋根の上へ移動を果たした。


このように、アルマは魔法は得意であるが、その分手際が大変不器用な猫であった。


「にゃ?」


屋根の上での見張りはポカポカとして大変心地良い。気持ちよく伸びをして少しだけ休もうと目を瞑る。


そのまま夜遅くまで起きることはなかった。

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