外伝9 声を出したら終わるダンジョン 全員ver

 ユリ、ユーキ、モンペン、エデン、マイ、ボドーは声を出したら終了となるダンジョンに来ていた。


一同の前に看板がたっている。


『声を出したらその人は転移し脱出を強制されます。最後まで残った方の前に豪華な報酬が出現します。』


と、書かれている。


「なるほどな!どうゆうことだ?」


言葉を発したマイの周囲に転移の魔法が発動する。「そういうことか!」と言いながらマイは消えた。そういうことである。


残った一同は静かに睨み合う。みんな生き残りたいのである。


蹴落とし合いのゴングが鳴り響いた。



 ユリが仕掛ける。


(まずは勇者一行から始末するのが先です!ユーキやモンペンが勝てばその報酬は私のものです!)


ユリはボドーの背後より器用に忍び寄り、顔の前で手をバンっと叩く。しかし、何の反応もない。ユリはキョトンとする。


「どわああああ!?」


「わあああああ!?」


瞬間、ボドーが突然驚いたように声を上げ、それに驚きユリも声を出してしまった。色々と遅いボドーは視覚や聴覚から脳への伝達も遅かったのである。


「ん?なんだ?なんでだ!?」と戸惑いながらボドーは消え、「遅いんですよ!」と悔しがりながらユリも道連れに消える。



 ユーキ、モンペン、エデンが残る。


モンペンが仕掛ける。変顔である。そのまま、エデンに近寄っていく。


その瞳に怪物の形相をした自分が映った。


「ギュゥゥゥ!?」


モンペンは恐怖のあまり、声を出してしまった。「ペン」と切なく鳴きながら消える。



 ユーキとエデンが残った。


二人になった条件反射でユーキが間合いを詰め、エデンに拳を突く。


しかし、エデンも反射的に体勢を低くし突きをかわしながらユーキの懐にしがみついた。


そして、脇腹をくすぐり始める。


「ッッッ!!」


それはユーキの弱点であった。なんとかエデンを引き剥がそうとするがくすぐりにより力が入らない。


さらにエデンはこのタイミングで火事場の馬鹿力を発揮する。どんなに暴れても離れる様子はない。エデンは勝利を悟りニヤリと笑う。


その頭にユーキの渾身の肘打ちが決まった。


「........ッ!」


エデンは言葉を発せずに静かに意識を失った。


ユーキは息を整える。


すると看板に『残り30秒』と文字が浮かび上がり、カウントダウンが開始される。


ユーキは考える。このまま無事終了となってくれればいいが、万が一にでもこの天然勇者とここに閉じ込められることだけは避けたかった。


かくして、ユーキは「もう起きるんじゃねぇ。天然ザル」と、吐き捨て転移していった。



 それから数秒後、エデンがむくりと起き上がる。目の前に宝箱が出現していた。


「やったぁ!生き残ったんだぁ!」


宝箱に手を伸ばした瞬間、エデンは転移していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る