外伝8 片手が離れないダンジョン③ ユーキとエデンver
転移させられたユーキとエデンの片手が握り合う形でくっついた。
「「ちっ!」」
刹那、二人は音速で剣を抜き、お互いの手首に向かって剣を振るう。
しばらく、剣を合わせるがお互いひかない。力比べをするように剣の押し合いになる。
「ぐぐぐ...大丈夫だよユーキ...?大丈夫だから黙って斬られなよ...!綺麗に斬った後、綺麗にくっつけてあげるから...!」
「く...天然勇者の言うことなど信じられるか...!お前こそ一発で両断してやるからその腕をよこせ....!」
結局、どちらも譲らなかった。
エデンは青の魔法陣を使い、自分の腕ごと破壊しようとしたが、このダンジョンでは魔法が使えないことが判明する。
やむを得ず二人は手を繋いだまま先に進むことにした。
しばらく進むと、エデンが足元に罠を見つける。いつもの癖で興味本位に踏んでみるとユーキに向かって麻痺針が放たれた。
「あっ!ユーキ危な...」
「!」
ユーキは咄嗟に目の前に盾を構えた。
エデンである。
「あ゛!?」
麻痺針はエデンの首に命中した。
「何するのユーキ...最悪なんだけど...。」
「スマン。テガスベッタ。」
麻痺針を食らったエデンは全身が痺れその場で脱力したように倒れる。
ユーキは振り返ることなくそのまま引きずり前に進んだ。
「ほんと、覚えてなよ...。」
エデンの声は低くドスが効いている。
ユーキがエデンを引きずったまましばらく進むと、巨大な毒スライムが立ち塞がる。スライムの種族の有効な攻撃手段とは魔力を込めた攻撃である。
スライムが高く飛び上がりユーキへ向かってジャンプ攻撃を仕掛けてきた。ユーキは回避するべくその場から離れようとした。
「させるかぁぁぁ!」
その絶妙なタイミングで、エデンがかろうじて動く指先で雑草を全力で掴み地面にしがみついた。
「なっ!?」
「ごめん草が絡まった。」
ジャンプ攻撃を避けることもできず、ユーキはそのまま毒スライムに全身を飲み込まれた。
「ゴボ!ゴボゴボガボ!」
「はっざまぁ。」
ユーキはスライムの中でなんとか魔力を込め剣を振るい、毒スライムを討伐した。
ユーキは毒を、エデンは麻痺の状態異常を受けている。
ユーキが具合悪そうにふらつきながら、エデンを引きずり前へ進む。
「「......。」」
お互い無言であった。
二人はそのダンジョンのボス、バジリスクと対峙する。バジリスクは大蛇のような姿の魔物である。
ユーキは剣を抜かずにふらふらと近づいた。
『ほう、随分と状態異常が効いているようだな。それなのに我に武器なしで戦うというのか、いいだろう!』
バジリスクは毒の牙を喰らわせようとユーキに飛びかかった。
「スマンテガイジョウニスベッタ!」
『ごはっ!?』
「がはっ!?」
ユーキはエデンをハンマーのように全力で振った。エデンの頭がバジリスクの顔を横殴りした。
「くっそだらぁぁああ!!」
今までにない程ぶち切れたエデンは麻痺状態からの奇跡の復活を果たす。振り回された勢いを利用しユーキを全力でバジリスクへ叩きつけた。
『ぎゃあ!!』
「ぐあ!!」
バジリスクは再度顔を強く殴られ吹っ飛ぶ。ユーキは背中を強打した。
『く...なんという連携攻撃だ...!』
バジリスクが二人の方を向こうとする。
『ひぃ!?』
瞬間、なんとも言いようのない恐怖がバジリスクを襲った。
二人の足元を見るに向かい合っているようだ。そこからひどい殺気が放たれているのである。
二人の顔が見れない。
自分の顔を上げることすら怖い。
バジリスクは全身が縮み上がり、そのまま降伏した。
ダンジョンのボスであるバジリスクの主に心を打ちのめしたユーキとエデンはようやくお互いから解放された。
二人の前にダンジョンを攻略した報酬として宝箱が現れる。宝箱を開けてみるとハートの宝石が二個そこにあった。
それを見たユーキとエデンは同時にハートを持ち上げる。
ハートの宝石は強く地面に叩きつけられ砕け散った。
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