外伝7 片手が離れないダンジョン② モンペンとボドーver
転移したモンペンのふわふわのおててとボドーの無骨な手が握り合うようにくっつく。
モンペンはぎょっとする。彼は今まで人間と手を繋いだことがなかった。しかも相手はボドーである。
な!?なぜだ!?なぜこの男の手を握らなければならないんだ!?これから俺はどうすればいいんだ!神は俺に何を求めてるんだ!?
モンペンは全身に汗をかき硬直する。
ボドーはしばらくの間何が起こっているかわからなかったが、モンペンと手を繋いでいることに気づきほっこりとした。
二人は一時間程スタート地点で硬直する。しかし、状況が変わらないためとりあえず前に進むことにした。
しばらく進むと、モンペンとボドーが麻痺針の罠を踏む。麻痺針は二人に向かって放たれた。
?
モンペンの麻痺針は羽毛のお腹にぱよんと当たり地面に落ちた。
「?」
ボドーは肩に針が当たるがぽりぽりと掻くだけであった。何もかもが遅いボドーは実は状態異常の効きも遅いという特性があったのである。
二人は何に気づくこともなく前に進む。
二人の目の前に猪の姿をした魔物が立ち塞がる。重量感のあるぷっくりとしたその姿はまさに極上の肉である。
それを見たのんびり屋であるはずの二人の目が全開に開け放たれる。
「うおっしゃあああああ!!ここは俺がやっていいよな!?やるからなぁぁぁああ!?」
いや大丈夫だ!!お前は大丈夫だ!!俺も大丈夫だ!!大丈夫だからぁぁぁああ!!
二人はお互いを思いやるように表面上声をかけつつ、雄叫びを上げながら我先にと魔物へ迫る。
大丈夫だああああ!!
足の速いモンペンが先にお肉へ飛びかかる。
「させると思うかああああ!?」
ボドーがそれを阻害しようと繋いでいる手を全力で引っ張る。
ぐはああああ!?
格闘家ボドーの全力は凄まじいものだった。モンペンの巨体が軽々と後ろへ投げ飛ばされる。
「うあああああ!?モンペン!?お前何をするんだああああ!?」
しかし、ボドーもそれに手を引っ張られ一緒になって飛んでいく。
二人はそのようにして、いつまでもお肉にたどり着くことはなかった。
その隙にお肉の塊は去っていった。
ふらふらと前を進むモンペンとボドーの前に、ダンジョンのボス、ビッグタイガーが現れる。巨大な虎の姿の魔物である。二人を見て威嚇をしている。
しかし、モンペンもボドーもそれを意に介する様子はない。
ビッグタイガーはトコトコとモンペンの目の前まで近づいてやり再度全力で威嚇する。
ビッグタイガーがモンペンの目を見る。
その目は、目の前の物事に何の興味も示さない虚なものであった。モンペンは先程ご馳走を逃してしまったことに、どん底まで意気消沈していたのである。
ビッグタイガーはくるっとボドーへ振り向き集中して威嚇を始める。
しかし、ボドーは目を充血させカッピラいたまま固まっている。彼の身と心は先程のお肉の前から一歩も動いていないのである。
ビッグタイガーはそんな二人の様子に野生の勘が働く。
オデがこれ程に威嚇しても微動だにしなイ。
この二人はオデなど取るに足らない程の実力を秘めているに違いなイ。
今のうちに降参しないとオデの命が危ういのかもしれなイ。
しばらくして、ビッグタイガーはお腹を上に向け降参のポーズをとった。
モンペンとボドーは、ただ前に進んだだけでダンジョンの攻略を果たした。
二人の前にダンジョンを攻略した報酬である宝箱が出現する。
しかし、二人はそれに何の興味も持たなかった。
モンペンとボドーは最初に出会ったお肉を探すべく、しばらくの間このダンジョンに滞在した。
攻略した時点でお互いの手は解放されている。しかし、それに気づくことなく、二人はお肉にありつくまで仲良く手を繋いだままだったという。
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