外伝6 片手が離れないダンジョン① ユリとマイver

 ユリ一行は勇者一行より助っ人に呼ばれ、共にダンジョンを攻略をすることとなった。みんなでダンジョンに足を踏み入れた瞬間、それぞれが転移する。


ユリが転移するとマイと片手を繋いでおり、離れなくなっていた。


「あれ、マイさんだけですか?他のみんなはどこに?」


「ふむ。他の連中も別の場所で私達のように二人ペアになっているのかもしれないな。」


「わぁ!楽しそう!手も繋ぐなんて親睦を図れそうでいいですね!」


「...ああ!そうだな!」


嬉しそうに歩くユリの隣でマイは少々ぎこちない笑顔となっている。


マイは気が早く、普段なら自分の思うままスタートダッシュをしているはずだった。


しかし、隣で手を繋いでいるのは雑魚代表ユリである。


マイは自分が走ることでユリを怪我させないよう精一杯自制していた。手を繋いでいないもう片方の拳に血管がビッキビキに浮き立つ。



 しばらく進むと、ユリが罠を踏み麻痺針を食らってしまった。


「あっ痛い!何か刺さりました!」


「ユリ!?大丈夫か!?」


ユリの体が痺れて脱力していく。マイが力なく倒れるユリを抱き止める。


「あ...れ...?体が動かなくなって...きました...。」


「ユリ!?死ぬな!ユリ!」


「すみませ...。ユーキとモンペンに伝えてくださ...。私はがんば..............。」


「ユリィィィィィ!!」


二人は抱きしめ合い最後の時を過ごした。


ただの早とちりであった。



 脱力するユリをマイが肩に担ぎ前に進む。


「よかった!麻痺しているだけのようだな!」


「全然体が動かない...。面倒をかけて申し訳ないです...。」


「何にもだ!私は剣士だぞ!それなりに体は鍛えてるんだ!こんなの丸太と一緒だ!」


「あはは...さすがマイさん...え、丸太?」


 

 マイはユリを担いでいる間は両手が塞がるため、攻撃をすることができない。


途中、マイの前に魔物が何度か立ち塞がる。その度、ユリを静かに下ろし、その場を動かずに迎え撃った。


気の早い彼女は敵の姿を見た瞬間誰よりも早く突っ込む癖が染み付いていた。


しかし、地面に横たわっているのは雑魚代表ユリである。


マイは自分が突っ込むことでユリを引きずることのないよう精一杯自制していた。


マイの剣を握る手からギュゥゥゥ!という爪が食い込む音が立つ。こめかみにもうっすらと血管が立ち始めていた。



 二人がしばらく進むと目の前にダンジョンのボス、キングタートルが現れる。巨大な亀の姿の魔物である。


『んう〜〜?誰かきたか〜〜?』


「ひ...大きい!?」


「すまない、ユリ!もう一度下ろさせてくれ!剣で迎え打ちたいんだ!」


「は、はい!わかりました!」


マイが麻痺で動かないユリを地面に下ろし、

迎え撃とうとする。


『んう〜〜〜?』


キングタートルが二人に気づき、ゆっっくり近づいてくる。


ジ....ジ......ジリ.........ジジリ....ジ.....


なかなか辿りつかない。


マイの息が荒くなっていくことにユリが気づく。


(ひょっとして状態異常!?マイさん大丈夫ですかね!?)


「だ、大丈夫ですか!?マイさん!」


「ユリ...すまない!本当にすまない!」


「え、何がですか、マイさん、わっ!」


マイがユリの脇に手を入れて持ち上げる。そして、素早く回転し、ユリの体が遠心力で宙に浮いていく。


「わああああああ!?」


マイはユリが遠心力で浮いたのを確認し、脇から手を離し剣を構える。


そして、ユリを遠心力で浮かせたまま凄まじい速さで亀に突っ込み、振り上げた剣に自制してきた全てを乗せた。


走らせろ!


突っ込ませろ!!


さっさと戦わせろぉぉぉ!!!


マイのあらゆる思いを込めた渾身の一撃は亀の脳天に叩きつけられた。


『うぼあああ〜〜。』


キングタートルは討伐された。


どこか清々しい表情となったマイが目を回すユリを片手で抱き止め、優しく声をかける。


「すまない...無理をさせてしまったな...。大丈夫だったか、ユリ。」


「うっぷ...は、はい...大丈夫です...。」


二人の背景に薔薇とナルトが舞う。


ダンジョンを攻略したことで二人の手はようやく離れた。



 ダンジョンを攻略したユリとマイの前に報酬として宝箱が現れる。


そこには袋に入った四つ葉のデザインの手紙が一部あった。『送ると一緒になれる可能性大!恋の手紙!おんなのこ用』と書かれている。


マイがすぐに手に取り、ユリに差し出す。


「えっマイさん!?これはどうぞマイさんが持っていってください!」


「ユリ、頼みがある。何も言わずにこれを受け取ってくれないか?」


マイは真剣な顔をしている。ユリにはマイの真意がわからない。


「マイさん、どうして...?」


「必要なのは、私じゃない。それだけだ。」


「...。」


ユリは素直に手紙を受け取った。


「ありがとな!ユリ!頼んだぞ!」


二人はダンジョンを攻略し脱出を果たした。


この手紙をユリが使うのはもうしばらく先の話になる。

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