第28話 魔王城での戦い

 魔王の宣告から5日後、海の街『オセアン』にて。


マイとボドーは約束の日にユリ達が現れなかったことに肩を落としつつ、決戦に向け備えていた。


 冒険団は、出発の時刻となり、浮上する魔王城の前に集合した。転送の魔法陣により、各々が魔王城へ侵入を果たす。魔王城では大勢の魔物が待ち構えており戦闘となった。


冒険団達は死闘する。時間が差し迫っているというのに、魔物の数が多く前に進むのが至難である。


そこに剣を携えた銀髪の剣士と白いペンギンに乗った少女が現れる。


「助かった...!増援か!?」

「ありがてぇぇ!!」


その一行は魔物にも冒険団にも構わず、戦っている横を通り過ぎていく。


「ちょっ!?」

「おい!手伝えや!!」

「お前らどっちの味方だよ!!」


非協力的な一行に対し冒険団が罵倒を浴びせる。


「えっ?私たちですか?」


その一行が振り返る。


「どっちの味方でもありません!」


「勝手にやってろ。」


さらにもぺ?と振り返ったペンギンの面はまるで人の全てを馬鹿にしているようである。


冒険団は一行のその失礼な様子に戦意が急上昇する。そして、目の前にその怒りをぶつけるに丁度いい相手を見つけた。


魔物の悲鳴が響き渡った。



 ユリ達は魔王城の奥で強敵と戦っているマイとボドーを見つける。


「お前達!来てくれたのか!」


一行はその横も通り過ぎる。二人はさすがに無視されると思わなかったので愕然とする。


「おい!?どこにいくんだ?何をするつもりなんだぁぁぁ!?」


通り過ぎていく一行の背中に向かってボドーが悲しげに問う。


「勿論!冒険団が来る前に魔王を倒して、そして、エデンさんを取り戻しに行かせていただきます!」


ユリがはっきりと言い放つ。その声には確かな決意が込められていた。


マイとボドーはその言葉に不意をつかれたような顔をするが、すぐに希望に満ちた表情に変わる。


「そっか...。そうだよな!エデンを助ける前に討伐するなんて気が早過ぎだよな!先に行っててくれ!きっと追いつくから!」


「頼んで良いんだな?エデンによろしくな!」


ユリ達が去っていく姿を見守った後、二人は目の前の敵に集中した。



 一行は魔物を無視しながら魔王城の中央に聳え立つ宮殿にたどり着く。宮殿の周囲をダークドラゴンが群れをなし守っている。


そこにぺちぺちとモンペンが前に進み出る。


お嬢!弟よ!俺に考えがある!


モンペンはユリの真似をして指をパキッと鳴らした。やり方が悪く、その後赤く腫れた。



 ダークドラゴン達が暇そうに宮殿を守っていると、距離を置いたところに不穏な鳥が現れる。その鳥はもぺーとやる気のない面をしている。そして、自分達に向かって何かをボソボソ喋り始めた。


ドラゴン達は同族の情けをかけて聞き耳を立ててやる。その鳥はこう繰り返していた。


お前ら、間抜けな顔だな!


ダークドラゴン全員が憤慨した。

フッザケルナァァァァ!オマエニハイワレタクナイワァァァア!!


その鳥は存外にすばしっこく逃げていく。ダークドラゴン達は瞬時に起き上がりギャオスギャオスと雄叫びを上げながら全力で追いかけて行った。


宮殿の周囲は綺麗に掃除された。


「モンペン...大丈夫ですかね?」


「逃げ足は早い。問題ないだろ。」


 ユリとユーキは物陰から出てきて宮殿の中に入っていった。

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