第13話 夜の国の謎③
一行はユリの魔法でそれを追い出せるか試すことになった。
ユリは気が気でなく、ベッドに横になりつつ寝れずにいる。
(自分でもコントロールできたことのない魔法に頼って大丈夫でしょうか...。というか、隠れてる何かを無闇に刺激してもいいのでしょうか...。)
不安と焦燥感ばかり積もっていく。
紛らわすようにちらっと頭上を見る。張り切ったモンペンが血走った目で見下ろしている。とてつもないプレッシャーである。
(やる気に満ち溢れている...!ありがたいけどなにこれ怖いです...!)
モンペンから目を逸らしたらユーキと目が合った。昨日の話を思い出す。
(きっと、ユーキは私を信じてくれてるってことなんですよね。それに応えたいなぁ...。)
ついでに、お風呂で覗いてしまった鍛え抜かれた大人の体も思い出す。顔が熱くなった。
(ユーキは赤ちゃん!ユーキは赤ちゃん!)
短い間に、ユリの頭はジェットコースターのようにいろんな感情が巡った。頭の中で赤ちゃん念仏を唱え続けなんとか寝たのだった。
ユリは夢を見ていた。
今にも壊れそうな砂の城が目の前にある。全部壊そうと思い、城に手をかけた。
その手を誰かが掴んだ。
ぺちぺちぺちぺち!
「ユリ!」
目が覚めると右手に青い魔法陣が出現していた。ユーキがその手を強く握り、モンペンがユリに一生懸命ビンタをしている。おかげで覚醒したようだ。
(痛い!?痛い痛い痛い!というか、これが私の魔法陣!?青い魔法陣なんて聞いたことがない!)
青い魔法陣は覚醒したせいかすぐに霧散してしまい、魔力が暴走しそうになる。慌てて制御しようと集中する。
その時、この国の上を覆う大きな魔力を感じた。それに暴走しそうになっている魔力を流すイメージをして叫んだ。
「ここから出ていけぇぇ!」
少しして、夜空がぐにゃりと歪む。
ぱちっと大きな目玉が一つ夜空に咲く。
それに続いてぱちぱちと咲いていき、空には無数の目玉が広がった。
夜空の色が真っ黒に変わっていく。
それは姿を現した。
それは黒く異常な禍々しさを放つ巨大な要塞の形をした生き物だった。下面にはたくさんの目がぎょろぎょろ動いている。羽が生え空中に浮いている。
これを、今まで勇者一行も誰も見つけることができなかった。
「魔王城!?」
魔王城が夜の国の空に隠れていた。それが放つ禍々しい魔力による影響を人々は受け続け、精神が壊れていたようだ。
突然全ての目玉が一点、ユリを見つめる。頭に声が響く。
「え?」
魔王城は空高くに飛び上がると移動を始め、遠くに消えていった。
ユリは魔力を大量に消費し気を失ったのだった。
本物の夜空が見えた後太陽が少しずつ顔を出したのを民はみた。久しぶりに感じる暖かさ、眩しさに言葉を失った。
途端、今まで感じなかった感情、気力が戻ってくる。王族の目にも光が戻る。自分達が国民にしていた仕打ちを理解した。
王族はあまりにもむごい仕打ちの償いをしようとした。しかし、国民はそれを拒否した。国民にも無気力に行動し政策から無関心であった罪の意識があった。
その後、王族と国民は意見を出し合い新しい政策を作ったという。
ユリはベッドの上で目を覚ました。モンペンが隣でアヒル寝をしている。ユーキが声をかける。
「ありがとな。」
「え?」
「俺ひとりでは救えなかった。」
「はぁ。」
「で、お前なんでそんなに詳しいんだ?」
「え?」
「おい、大丈夫か。」
「え?大丈夫です。」
ユーキは大丈夫じゃねぇと諦める。
ユリはその言葉がほとんど頭に入ってこないくらい考え事をしていた。
ユリ達がソルの国を出ようとした時、門の前に勇者一行が立っていた。
「ようやく見つけた。君だったんだね。」
勇者エデンが近寄ってくる。
魔王城と目があった時に頭に響いた言葉。
仰せのままに。我が主よ。
「青の魔法陣の持ち主。」
勇者はユリに剣を向けた。
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