第18話 青の魔法陣の謎①
一行は、ユリの修行が終わり、『ソル』に滞在している勇者達に会いに行くことにした。
出発する前のこと。
「エデンさん達の前で魔法使うの緊張しますね...。うまくできるでしょうか...。」
ユリが不安を口にする。
緊張に任せて走り回ると気持ちいいぜ!
モンペンがユリにペンペンと助言をする。
「そんな異常なことしたら即斬り伏せられてしまいますよ...。うまくいくようにおまじないをくれませんか?ユーキ?」
「...。」
ユーキは困惑の表情を浮かべている。
ユリはユーキに気取られないように器用に少しずつ距離を詰め、ユーキの膝の上に座ることに成功していた。じーっと言葉を待っている。
「とりあえずおりろ。」
「おまじないをくれたらおりますよ。」
いつもなら頭を掴んでそこらへんに放り投げているはず。しかし、堂々と座る姿にユーキは動くことができずにいた。
「それじゃ勝手にいただきますね。」
ユーキを抱きしめ、耳元で声をかける。
「ユーキ。信じてくれてありがとう。私、がんばります。」
ユーキはされるがまま固まっていた。モンペンを何かを訴えるように見つめる。それに対し、モンペンはあえて、もぺ?とした顔を返した。
その後、ユリ達は『ソル』の城下町の広場で勇者一行と対峙した。
マイはエデンに手を握られている。
「う、うわぁあ何をするんだエデン!早く戦わないとっ!はっ恥ずかしいだろ!」
「こうしないと、マイ突っ込んじゃうでしょ。話は聞いてあげようね?」
エデンがマイににこっと微笑む。
「ぐは!?はわわわ...。」
マイはエデンの笑顔をとどめに戦闘不能となった。しゃがみ込み脱力する。
「君達の答えを聞かせてもらってもいいかな。」
エデンがユリ達に尋ねる。
「はい。どうぞご覧ください。」
ユリが片手を勇者一行に向ける。エデンは剣に手をかけ、応戦体勢となる。ユリはその様子に構わず目を閉じて集中する。そして、呟いた。
「おにぎり...。」
おにぎり?なにそれ?
しばらくその場に不思議な静寂が訪れる。
数十秒後、ぽんっとその手にコイン大の赤い魔法陣と小さい火の玉が現れた。
「おっそ!?ちいさっ!?これがおにぎり!?」
マイが想定外な現象に驚く。
「これが私の全力です。このように本来の魔法陣は青ではなく赤なんです。青い魔法陣は私が寝ている時に現れます。」
エデンはそれがよく見えないのか目を凝らす。
「私は魔王ではありません!私はただの農家の娘でベビーシッターで旅人なんです!」
「そうかわかった!...えっ?どれだ?」
ボドーがユリの言葉に首を傾げる。
「助けてください!これ以上人を傷つけたくないんです!」
ユリはその場に跪き、一生懸命助けを求めた。
少しの沈黙の後、エデンがいつのまにかユリの前に立っていた。ユーキが気づき動くよりも早く、エデンはユリの頭に手を置く。
「そっか...大丈夫だよ。怖い思いをさせたよね。ごめんね。」
そして、ユリを優しく撫でた。
「読めねぇ...。」
ユーキが独特な個性をしている勇者一行に向けて言い捨てる。
モンペンはその隣でもぺーとしていたが、やがて全くだ!と同調した。
ユリ達は勇者一行と和解することができた。その青い魔法陣について一行は考える。
「なんで寝てる時に現れるんだろ。魔王が姿を見せないのと関係がありそうだな。」
マイが早い思考で考える。
「恥ずかしがり屋さんだね。」
エデンは天然な思考で考える。
「解呪の魔法は前に陶器に封印された時にかけてもらったことがあります。その後、変わりありませんでした。呪いの類ではないようです。」
ユリは『ハーベスタ』の街での出来事を話す。
「そうか、俺はわかったぞ!お前は呪われていないかもしれない。」
ボドーはなぜかユリの言葉を繰り返す。
「うーん、なんだろね。魔王城も見つかったし、僕らもいつまでも足踏みしていられない。魔王城の場所に向かいながら調べてみようか。」
「...こいつらと同行するのか?」
一同がエデンの意見に賛成する中、ユーキは露骨に嫌な表情を浮かべる。
ともかく、ユリ達は青い魔法陣の謎を解くため勇者一行と同行することになった。
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