第6話 がんばれモンペン①

 一行がリンの故郷に向かう道中の話。


ぽかぽかと暖かく穏やかな気候の中、ユリ達は馬車ならず鳥車での移動を続けていた。


ユリはモンペンの手綱を握りうつらうつらとしている。ユーキがそれに気付き荷台から声をかける。


「おい起きろ。」

「あ?すいません。もう大丈夫です。」


しばらくすると、またうつらうつらとし馬車から落ちそうになる。


「おい、代わる。後ろで休んでろ。」

「あ、ありがとうございます。」


ユーキは見ていられずユリと場所を代わり手綱を握った。


モンペンは気持ちよく歩いていた。少し涼しいそよ風を肌に感じつつなんとなく後ろを見た。


ユーキと目が合った。


前を見る。振り向く。

ユーキが手綱を握っている。


モンペンはぶわっと緊張した。


(い、今まではお嬢にしか手綱を握られたことがない!どうすれば、俺はどうすればいい!)


段々と早足になり、瞬間ドタドタ走り始めスピードがでる。ユーキは故郷の暴れ馬を思い出し懐かしく感じた。手綱を操りモンペンを止める。


モンペンは汗を大量にかいて固まっている。ユーキがモンペンの手綱をはずした。


「少し休む。好きなだけ走ってこい。」


瞬間、モンペンは興奮に任せて力いっぱい走った。走って走って走りまくった。そしてジャンプしてみる。今までで一番高く飛べた気がした。


気持ちいい!


しばらくしてモンペンはいつもの調子を取り戻した。


「緊張することは悪いことじゃない。驚かせて悪かったな。」


ユーキが撫でながら穏やかに声をかけた。


弟よ...モンペンはホロリと泣いた。


「ど、動物好き...」


ユリが顔をあげて呟く。その後、がくっと夢の世界へ旅立った。


その後、モンペンは頻繁に振り向いてはユーキにペンペン話しかけるようになった。ユーキが頷くと満足そうに前を向く。


「さっぱりわかんねぇ...。」


モンペンとユーキは仲良くなった。



 馬車の中で休めたユリはリンと話をする。


「魔物は苦手ですか?」

「苦手...怖いの...。」

「何かあったんですか?」

「あいつらは、本能のまま、人間を殺すから...。私の家族も生きたまま殺された。私にはもうおばあちゃんとお姉ちゃんしかいないの...。」


リンはモンペンを見て静かに言った。


「化け物。」



 一行は川の近くで休憩をとる。リンは川に足をいれて休んでいた。ぽとっと後ろから音がして振り返る。真後ろにモンペンがやってきていてリンを焦点の合わない目で見下ろしていた。


「いや、いやぁぁあ!」


リンは絶叫し川に落ちた。


その後、リンはモンペンとさらに距離を置いて睨むようになった。


川の近くには花が一輪寂しく落ちていた。



 一行は街に向かう中間で村を見つけたので宿泊することにした。3人が宿に入る中、モンペンは距離を置いてもぺっとしていた。


「中に入りましょ?」


ユリが促すが聞こえていないようだ。リンはモンペンを冷たくみるとドアを強く閉めた。



 ユリはそこらへんに落ちている木の枝を拾い、器用に鳥の巣のような寝床と屋根を作ってみた。屋根の隙間には葉っぱやお花が詰まっている。


即席でできた巣の出来の良さにモンペンは飛び上がってしまい屋根を壊した。しばらく何が起きたかわからないでいたが、やがて気づきショックを受けた。


「いいですよ。すぐ作れますから」


すまねぇ、俺が不甲斐ないばかりに。


「全然!すぐ直りますよ!」


ユリが巣を修理する。モンペンは話しかける。


お嬢、人と仲良くなるのは難しいな。


「少しずつですよ。あなたは優しいからその内仲良くなれます。中に入らないのもリンが怖がらないように気にしてくれたんですよね。」


なんてことない!俺にはこの羽毛がある!風邪なんて縁のない話さ!


モンペンは自慢げにペンペン話した。



 その夜、リンは寝ることができずにいた。モンペンの顔を近くで見たせいか、魔物がリンの家族を襲う光景を思い出し頭を離れない。


リンは外の空気を吸いに宿から出て散策してみた。



 その頃ユリは夢を見ていた。小さいお人形が落ちている。それを拾って力を入れて握った。



「え?何?」


 森を歩くリンの周囲に青い魔法陣が複数光った。

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