1-3 親友はタヌキ?
翌日の放課後、自分は図書室ではなく
あらかじめ言っておくが、九尾もとい蕪木につままれてしまったから図書室に行けなくなったわけではない。自分が所属するオカルト研究部の集まりがあるからだ。
「お、重役出勤だねえ、梅」
「日直だったの知っているだろ、万次郎」
待ち合わせの時間より少し遅れてレンガ造りの喫茶店に到着すると、国道を望む窓際の席からタヌキ顔というのだろうか、特徴的なたれ目が悪態と共にこちらを向けられた。自分はそのタヌキ顔に噛みついてやろうかと言わんばかりに睨み返した。
たった三名しか在籍しないオカルト研究部。その数少ない部員の一人で、名を
万次郎とは中学二年の頃に知り合ってからの腐れ縁でクラスメイト。そして、互いの痛みを共有しあった時から親友と言って差し支えの無い存在だ。その見た目はさっきも述べたがタヌキを思わせるようなたれ目が特徴で、おっとりとした印象を見た人に抱かせる。それでいて同じ思春期を過ごしたとは思えないほど器用であり物腰が柔らかいため、同級生に限らず年上からもよくかわいがられている。
ちなみに万次郎という名前から、偉人の名を冠してクラスメイト達からジョンと呼ばれて呼ばれているのだが、自分だけは絶対に呼ばないようにしている。その理由について話をするのは面倒なので、今はひねくれているからと言うことにしておいて欲しい。
そんなひねくれものの自分はカウンターで店主にブルーベリーがたくさん乗ったレアチーズケーキを頼み、万次郎の隣に座る。甘いものが苦手な万次郎は自分に当てつけなのかコーヒーのおかわりを頼んだ。
お店としては嬉しくないことなのだろうけど、コーヒーもケーキもすぐに出してくれるのがこの店の良いところ。
ただ、砂糖もミルクも入っていないコーヒーの独特な苦い香りは大の甘党である自分にはどうしても良い匂いに思えなくて、どうしても眉をひそめてしまう。更にはその姿を見てにやにやとする万次郎が視界に入るのだから、気分は上がらずがらず眉ばかりが上がっていく。
とは言え、人の飲み物にけちをつけることはできないので、万次郎の方を見ないようにしながらケーキを一口。
「うめぇー」
口に広がるのはブルーベリーとレアチーズの甘み。更にはその甘みを引き立たせてくれる少しの酸味たち。
部長に呼び出された時から来るようにこの喫茶店だけれど、この素晴らしいケーキを食べれるだけで
ここに来る価値があると思う。
本当に部長には感謝を言わないと……。
「そういや、部長は?」
「学校で先生に捕まったみたいだね。まあ、梅が来たからもうすぐ来ると思うよ」
「なんでおれが来たら部長も来るんだよ」
「なんでだろうね」
自分の反応を楽しんでいるのだろう万次郎は、
そんな万次郎に実力行使をしてでも吐かせてやろうかと考えていたところで、息を切らした部長が飛びこむように入店してきた。
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