第13話 予感

介護って、別に今は気にしない人も多いと思う。


僕もそうだった。


僕が介護の予感を感じたのは、高校生の時だった。


結構早くね? 


婆さんがよく転ぶなーって思ってた。


でも家族も、そうしか思わなかった。


ちょと、目を離すと危ないことがある、程度。


でも、婆さんはまだ畑に出てたし、


家事もやっていたし、介護の「か」の字も分かってなかった。


「介護って大変」って言われても、「あ、そうなんだ」って感じ。


そして僕は大学に行って、一人暮らしをして、それから色々やって、いつの間にか僕が手のかかる障碍者になった。


僕が日常生活を送れるようにまで回復したら、今度は婆さんが、以前に輪をかけて転ぶようになっていた。


家族は大変だったと思う。


それからは、あっという間だった。


婆さんが転んで、歩行器が必要になり、


次いで車椅子になって、結局寝たきり状態。


僕が高校生の時に抱いた予感は的中した。


最初は、歩行器段階で「介護って大変」だって、


思っていたけど、違った。


寝たきり状態になってから、本当に「介護って大変だ」になった。


自信が障碍者になること。


障碍者になって自宅介護すること。


いつか、どこかで予感はあった。


でも、見てみぬふりをした。


家族がいる限り、「介護って大変だ」となるかもしれない。


その時は、ちょっとでもコレを思い出して、視点を変えれば意外にふざけられることも、ちょっとでも心のどこかに置いておいてもらえたら、幸いだ。


僕が自宅介護する理由は、

僕が介護の予感を覚えたからだ。


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