3-p11 ガチャと石とぬい (2)
……で。15分ほど経過。
ヒデアキの、8回分の10連ガチャ結果が出揃った。
「可もなく不可もなく、ってとこだな」
と
ヒデアキは80連の最後にようやく「バースデー
「限界突破はできなかったかー。……でも平均ぐらいなら、よしとしよう。千景君が強運だったし」
「ん? 俺の運の良さは、別にお前に関係ねえけど。まあいっか」
「早速、碧生君を育成だ!」
ヒデアキはこういう時のために温存していたアイテムを次々と景気良く使う。ぬいに似たデフォルメキャラのイラストが輝いて、一気にレベルが上がり、基本無表情のゲーム内の碧生が珍しく笑顔を見せた。
ミニストーリーを開く。内容は、碧生と千景の所属する「ハネダ総研」のクセツヨメンバーたちが碧生のためにささやかなパーティーを開くという、日常系の微笑ましい話だった。
そのあとは、ゲームはおしまいにしてコマ撮りアニメの作業時間になった。
千景と碧生が料理しているていで撮った写真を、スマホアプリで組み合わせる。
数秒の動画なのに、写真を厳選して色調を調整し、文字を少し入れる作業だけで1時間半ぐらいかかった。
最後に碧生が、
「とり天を揚げる効果音を付けたい」
と言い出した。ネットでフリー音源を探すと、微妙に違うのがいくつかあって迷って、
「碧生君、今の1こめと2こめと3こめ、どれが好き?」
試聴ボタンを押していたヒデアキの視線が、画面から机の上の碧生に移る。
碧生はうつ伏せに倒れ伏していた。
「……寝ちゃってる」
またいつもの寝落ちだ。
ヒデアキは少し考える。
「松神碧生誕生祭」のタグに対しては既に、事前に準備しておいた「誕生日ケーキを作る動画」を投稿し終えていた。だからタグ付きで「ミニチュアとり天動画」をアップするのはマストではない。
でもせっかくだから日付が変わる前に、「第2弾」と書き添えて、タグ付きで新しいコマ撮り動画をツイートした。最終的な仕上がりは、明日碧生が目覚めてから、ツイッターのタイムラインで確認してもらおう。
そんな風にして今年の、誕生日の夜は更けて行った。
***
昼すこし前。
また遅く起きて冷蔵庫の食べ物を物色しているシンタローに、千景が声をかけた。
「シンタローのバンド、結構人気なんだな。ライブチケット見たら、東京はとっくに売り切れてた」
「おー。チカぬい、来たかったか? タダじゃぜってー入れねえからな」
「最終日は配信するんだろ。だったら碧生とヒデアキも家で見られるから、そっちの方が好都合だ。アヤトも配信チケ買ったって言ってたぜ。うちわ作って振ってやるからな」
「いや、そういうのじゃねえよ。ヤメロ」
シンタローが迷惑そうにしているのを見て、千景がクククと笑った。
「お前、全然プロっぽくねえなあ。売り上げに貢献してやるってのに」
それからふと、真面目な顔をした。
「それとな。気になってることがあンだよ。金魚の話。あれ、なんだったんだ。オカルト系か」
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