つま先を愛してください
タムラ ユウイチロウ
“つま先を愛してください”
冷たくて分厚い
彼らのもとで暮らしていたころのことを思いかえす
うまく笑うことに授業の時間をつかって
言外の喜びを身体で教えられているうちに
すべての季節の花が満開になっていた
彼らは全ての花の花弁をしゃぶり尽くして
すぐに枯れたけど
いやになって
教室にしかけた花火はその花のどれよりも
そんな彼らに準じていたと思うのだけど
その想いに行き着くまえに
わたしの半身を廊下の窓から突き落として
そっから咲いた花が満開になると
唾と視線で枯らして笑った
咲かすことより
枯らすことが好きになって
そんなことはダメですという貼り紙で
教室を覆い隠して
わたしのもう半身を少しづつ
少しづつ枯らしていった
舐め尽くされて
腐りきった
僅かに残った視線を降ろすと
彼らのつま先がみえた
つま先は怒って、それから泣いた
汚れていた
やっと目玉が落ちて
同じになった視線で
やっと安心した
もうだれも笑っていなかった
つま先を愛してください タムラ ユウイチロウ @you_monodiary
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