第27話 魔王らしい事、する事

「やあ、多分そろそろ来るんじゃないかって思ってた」


 いつの間にか元通りになっていた魔王城の玉座にて、カナタはスゥの来訪を待っていた。

 奥に置いてあった如何にも魔王が座って良そうな椅子の上にどかっと腰を掛け、彼女はふりふりと手を振るう。


「お久しぶり、ですね」

「うん、おひさ。元気にしてた?」

「いやぁ、そんな事より魔王様。お兄様、知らないですか?」

「……何か、あったんだ」

「あれ、その件について「そろそろ来るんじゃないか」と思ってたんじゃあ?」

「いや、それとは違くて、ほら。世界が一新されて、いろいろなものが増えたじゃない? てっきりその事かと」

「確かにそれに関してはいろいろと報告はしたいですがねぇ……それより重要なのはお兄様なんですよぉ」

「むぅ、一理ある」


 とん、と彼女は玉座から降り、それからスゥの近くへとやって来る。


「具体的に、何があったの?」


 スゥは、つまり気づいたらクロードが消えていていて、捕捉する事も出来なくなっていた事を告げる。

 それを聞いたカナタは「ふむ」と首を傾げる。


「あの人、お兄様が勝手にいなくなるという可能性は、ない訳だし。だとしたら何かあったと考えるのが妥当か」

「そうだと、思います」

「貴方の考えを聞こう。何があったと思う?」

「……新世界に発生した何かか、あるいは旧世界の重要人物の仕業かと」

「んー、例えばベルゼとか?」

「あれ、もういなくなったんですか?」

「うん、痕跡もないし、往生したと考えられる。彼としては、本望なんじゃないかな? 自由な死を迎えたいって考えてたらしいし」

「ふむん……じゃあ、やっぱり」

「新世界が産まれた時に発生した何か、だろうね」


 二人は頷き合う。


「とはいえ、それに関しては完全に未知数だよ。正直私は魔王でこの世界においては敵が勇者くらいしかいない、つもりだけど。だけど今はそうとは断言出来ない」

「ですねぇ」

「貴方の兵器も何割か使えなくなっているみたいだし……これは割かしピンチなのかもしれないぞ? 下手すると私達、負けちゃうかも」

「お兄様をその何かに渡したまま死ぬわけにはいきません」

「ええ、そうね」


 彼女は覚悟の籠った瞳をする。


「私達は、お兄様の上で服上死するんだから☆」

「そうですねぇ」

「しかしテクノブレイクで下にいたとしても服上死って呼ぶのはどうしてだろうね?」

「さぁ?」


 良く分からない会話もするが。

 ともあれ、二人は合流する。

 現状、魔族の中でトップ1、2を争う実力者が。

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