第26話 新しい世界
「ん、んー」
スゥは一人、飛行体――というかジェット機に乗って映し出される映像を見ながら首を傾げていた。
魔王が魔王となり、そして世界が新しく生み直された。
それによって世界の構造がちょっと変わった。
……というより以前は勇者であるミナミが通らない場所意外な文字通りの意味で「何もない」の状態だったが、今は違う。
みっちりと、世界がある。
森があり草原があり、川があり山がある。
兎に角いろいろなものがある。
むしろそれの方が普通なのだが、しかし以前のスゥ達は「何もない」方が普通だと思っていた。
恐らく、そのように出来ていたからだろう。
そしてミナミというか原作者の改心によって世界が生み直され、そして現状。
スゥはこの世界を正しく見る事が出来た。
「凄いねー」
とはいえ、感心するのもそこそこにして、彼女は本来の目的を果たすべく観測をする。
彼女が今しているのはクロードの捜索だ。
いつの間にか姿を消していた彼。
しかし実は発信機が付けられていて、それを辿ればおのずとその姿も見つかると思い、同時にそれを明かせばもしかしたら「イジメて」くれるかもと淡い期待をしながら彼女は早速発信機を探ってみたのだが。
発信機はロストした。
つまり破壊されたか、何かされた。
少なくとも機能していない。
なのでスゥは冷や汗をかきながら「す、すぐに見つかると思うよー」と言いながら人工衛星に接続――しようとした。
しかしそれはいつの間にかなくなっていた。
これに関しては世界が新しくなった時に堕ちたらしい。
こうなると、地道に探すしかない。
地上からドローンを飛ばし、詮索。
しかしクロードの姿も、その痕跡も、どこにもなかったのだ。
……そうなって来るとどこかに連れていかれたのでは。
そのような結論に至った彼女達は解散して地道にクロードの姿を探す事にした。
そしてスゥはジェット機を使って空から調べる事にしたのだが。
既にクロードの魔力は登録しているので、発見したらその反応がある筈。
しかし現状、どれだけジェット機を飛ばしても彼の反応はなかった。
「一体、どこに……?」
彼女の呟きに応えてくれる人はいない。
……そうしてしばらく空の上から地上を見下ろしていた彼女だったが、すぐに思い立ちジェット機の行き先を変える。
向かう先は、元魔王城。
彼女が指先一本でぶっ飛ばした、今では勇者ミナミの妹である魔王が根城としている場所である。
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