第6話 ガールズトークは二人でも姦しい
一方。
――一方、その頃。
「何て言うか」
冒険者ギルドにて受付嬢に新しいメンバーを探している事を伝えたミナミ。
その後、彼女は一緒に付いて来て貰ったニナと一緒に街を歩いていた。
そしてしばらく無言で街を観察していたミナミだったが、唐突に口を開いてそのように話始めるのだった。
「あの二人、なんか距離感おかしくなかった?」
「え、その話またぶり返すの?」
意外だ、と言わんばかりに大げさに驚いて見せるニナ。
「酒の勢いで騒いだ事を反省しているって言ってたけど」
「その内容は聞かされていないじゃない」
「それはそうですケドも。でもさ、だからと言って」
ニナはこれまた大げさに肩を竦めて見せる。
「別に、二人がどうなろうと私達には関係なくない? それともミナミ、なんか気になるの?」
「……」
「え、そうなの?」
割と本気で深刻そうに沈黙するミナミに対し、ニナも一瞬素に戻る。
ミナミがそんな風に沈黙する事に関しても、そしてニナが素に戻る事に関しても、割と珍しい事だった。
しかしすぐにニナはいつもの調子に戻り、「えーっ?」と惚けたように言う。
「ミナミったら、普段は戦闘狂っぽいのに意外と乙女なんだ」
「誰が戦闘狂よ。それに、私だって普通の女の子なんだから、そう言う事を気にしてもいいでしょ?」
「ふーん?」
ニナはジロジロとミナミの顔を見る。
改めて「ふーん?」と言いながら興味深げな表情をする。
「何て言うか、変わったねミナミ。さっき言った通り、ミナミってこの世界に召喚されて間もない頃は凄く戦闘狂で怖かったもの」
「それは、そう、ね」
「やっぱり、魔王を倒して帰りたいって思ってたから? いやまあ、私だったらそう思うだろうから、きっとそうなんでしょ」
「それは、どうかしら」
曖昧な表情をしながらミナミは「私にも分からないわ」と続ける。
「私は、南海明花は、かつての世界では戦闘とは無縁の生活を送っていたの。この世界に来て戦う事を強要されて、それで実際勇者として戦えてしまったのは、今でも不思議」
「勇者の素質は召喚された時に与えられるもので、それは精神にも影響を及ぼすって話はソフィア様に聞いたけど」
「……ソフィア王妃、ね」
今度は渋い表情をしながら「私、あの人苦手なのよね」とミナミは遠い目をする。
彼女の召喚を最終的に決定した人物。
この国を統治する権力者にしてこの国の象徴。
ソフィア王妃。
この国の王は数年前に病死し、その為現在はその妻であった彼女が政治を取り仕切っている。
「フィリアちゃんは可愛いけど、純真無垢過ぎてちょっと苦手だし」
「フィリア王女ね。まあ、ミナミの言う事も分かるけどね。あの屈託のなさは、私達みたいな世間ずれした人間には眩し過ぎてちょっと、って思う」
「そう言えばあの子、クロードと凄く仲良かったわね」
「そうなの?」
「うん。最後会った時、凄くベタベタしてた気がした」
「ふーん? 王族に愛されているとか、クロードの奴、隅に置けないじゃん」
そう言いつつ、ニナはちらりとミナミの表情を盗み見る。
ミナミはどこか、不機嫌そうな表情をしていた。
何故、しかし彼女が不機嫌になる理由を考えるに、その答えは一つしかないようにニナは思えた。
(これはなんて言うか、前途多難と言うか)
厄介と言うか。
どちらにせよ、面白い事には間違いないと内心笑うニナだった。
「話を戻しましょう」
「どこまで?」
「クロードとテレサの話まで」
「最初までね」
「実際、何が起きたんだろ。お酒で間違いを犯すって言っても、クロードみたいな堅物がそう問題を起こすとは思えないのよね」
「それはそう。堅物過ぎてかっちんこっちんだもんね」
「だけどあのテレサの反応を見るに絶対何かあったと思うのよね」
「気のせいだと思うけどなー、私は。ていうか、別に何かあったところで、さっきも言ったけど私達には関係ないじゃん」
「私は」
ムキになったように声を少しだけ強め、その後「しまった」と後悔したような表情をしながら、ぼそぼそと呟く。
「気になるわ」
「ま、良いけどさ」
ふー、と息を吐きながらニナは天を見上げる。
これはいろいろと波乱な予感がするぞ、と内心にやにやする。
その時は絶対遠くから眺めていようとも思っていた。
(ま、私には関係のない話だからね~。クロードも良い奴で格好良い奴なのは間違いないけど、『そういう』目では今のところ見れないし)
完全に対岸の火事を野次馬する気満々のニナだった。
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