第5話 新たな一日が

 マリアの病室を訪ねた。

 今日で退院だ。顔色もずっと良くなった。

 スッピンなので、ヤケに幼く見える。



「やァ、元気そうだねェ……。さァ、着替えだ。今日で退院だ。家へ帰ろう!!」

 なるべく自然に微笑みを浮かべた。



「あなたは……」

 だが彼女はひと晩寝たことで、ボクの記憶がリセットされてしまったみたいだ。


「えェ……!!(☉。☉)!!」

 どうやらボクの顔を見ても解らないようだ。



 また今日も、初対面の挨拶からしなければならないみたいだ。



「フッフフ、ボクはノアだ。大和ノア」

 しかしそれでも仕方がない。気長に回復を待とう。



「ンゥ……、ノアさん?!」

 彼女は、眉をひそめて聞き返した。


「いや、ノアッて呼んでくれ!!

 いつものように、ノアッて、ねェ!!」



「ノア……、私は」



「キミはマリアだ。ボクの奥さんだよ」

 優しく彼女をハグした。

 柔らかな胸の膨らみがボクの胸板へ押しつけられる。

 かすかに彼女は身を固くした。


 まるで初めてのようだ。

 



 こうして、ボクたちの新たな一日が始まった。











☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る