第7話:かくも長き不在
遠くまで伸びる美しい街並み。青く澄んだ空が、この調和に満ちた光景を見守っている。
タロウと私は、宮殿のバルコニーからこの街を眺めていた。
「どうしても、地球に帰るの?」
「おかしいね。あのころは、あんなに逃げ出したかったのに」
微笑みながら、タロウは言った。この笑顔は、あのときからすこしも変わっていない。
「ターちゃんがいなくなるなんて、考えられないよ。私はやっぱり、ずっとそばにいてほしい」
「ずっと、か……。それがムリだってこと、オトちゃんが一番よくわかってるでしょう?」
私は、なにも答えずに、タロウの手をギュッと握った。彼の言うとおりだ。
私たちが知らない「老化」という現象は、リュウグウの環境によって、極限まで遅らされているにすぎない。けっしてゼロにはできないのだ。そして、そのことは最初からわかっていた。私にも、タロウにも。
おそらく地球に戻れば、これまでのあいだに蓄積されていたものが、一挙に現われてくるだろう。
「オトちゃん、僕のお願いのこと、考えておいてくれた?」
「うん」
その願いは、私にとっても、身を切られるような悲しみをともなう。でも、それがタロウの最後の望みなら、拒むことはできない。
「ターちゃんが故郷に帰るなら、私も、一つだけお願いしたいことがある」
「なんでもどうぞ! 僕にできることなら」
「あのね……」
私は、タロウに近づいて、そっと耳打ちした。誰が聞いているわけでもないのに。
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