第3話訳者による註釈とあとがき

※1 イタリア人作家アントニオ・タブッキの代表作の一つ

※2 フリードリヒ・ニーチェの思想で、経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、超人的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に、永劫的に繰り返すことを確立するという思想 。ニーチェは「ツァラトゥストラ」にて、3段階変化を述べている。「精神がラクダとなり、ラクダから獅子となり、獅子から幼子になること」

「英知への道」と題した遺稿には、3段階の変化と重なる「道徳克服のための指針」が描かれている。第一歩が、尊敬に値するいっさいの重みに耐える「共同体の時代」ならば、そのいっさいを打ち砕く自由な精神の「砂漠の時期」が第二歩である。そして第三歩は、頭上にいかなる神も戴かない創造者の本能、「大いなる責任と無垢」の時代が訪れる〔遺稿2.7.211〕

※3 アイルランド出身のフランスの劇作家、小説家、詩人。不条理演劇を代表する作家の一人であり、小説においても20世紀の重要作家の一人とされる。ウジェーヌ・イヨネスコと同様に、20世紀フランスを代表する劇作家としても知られている。1969年にはノーベル文学賞を受賞している。

※4 ドイツの哲学者エーリッヒ・フロムのエッセイ『愛するということ』をひろム氏はパロディにしているようだ。

※5 エーリッヒ・ひろム氏の長編処女作「サルトル先生とシモーヌ」https://note.com/books_note2021/n/n81138aef998d

※6 パリのガリマール出版社刊行の、フランス文学を主とする、世界文学全集では『プレイヤード版』、『プレイヤッド叢書』などとも呼ばれるものがあり、ひろム氏設立のガリマーロ社はその全集をパロっているようだ。

※7 フェルナンド・ペソア ポルトガルの国民的詩人、ジョゼ・サラマーゴ ポルトガル人 ノーベル文学賞作家、ジャン・ポール・サルトル フランス人哲学者 ノーベル文学賞辞退

※8 ひろム氏はサルトルの実存哲学に影響されている。「能動的に自分自身を社会へ投企し、他者との関係性の中で自分の存在を確立させていく、自己の在り方を作り上げていく」詳細はJ.P.サルトル著書「実存主義とは何か」参照

※9 チェコ・フランス文学者 ミラン・クンデラの「小説は人間の実存の未知な部分」という考えに影響されて、ひろム氏はパロっているようだ。

※10 「嘔吐」ジャン・ポール・サルトル著で出てくるマロニエの木を指す。マロニエの木を見て主人公ロカンタンはとてつもない不安とねばねばとしたものを感じ吐き気を催す。変わることのないマロニエを見て、存在の真の姿を見た瞬間でもあった。「存在とはある。存在はそれ自体においてある。存在はそれがあるところのものである。」(存在と無/J.P.サルトル)(即自存在)しかし、人間の実存とは、未来へ向かって自己の存在の在り方を切り開いていくものである。(対自存在)

永遠にそこに、ただ、ある、即時存在のマロニエを見たときにロカンタンは耐え難かったため、吐き気を催した。

※11 「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ著における作中人物

※12 エーリッヒ・ひろム氏はタブッキの作品「遠い水平線」を愛読している模様。色濃く影響された一文といえる。

「スピノザは、イベリア系のユダヤ人で、目のなかに、遠い水平線をもっていた。われわれが動くと、水平線も動く。だから、水平線とは、幾何学的な表現だ。私の登場人物も、なにかの魔法で、水平線に到達してくれたことをこころから祈っている。

彼もまた、遠い水平線を目のなかにもつ人間だったから。」(遠い水平線/アントニオ・タブッキ 須田敦子訳 白水社)

エーリッヒ・ひろム氏の「『遠い水平線』に関するスピノザとタブッキについての考察もどき」は訳者のnoteにて翻訳されている。

https://note.com/books_note2021/n/n01c5486e3173


訳者のあとがき

 本書は20xx年11月7日、刊行されたエーリッヒ・ひろムによる学術書「妄想力の問題」第4部(ガリマーロ社での自費出版)を抜粋し、日本語に翻訳したものです。地球時間30年前、20x1年10月、東京で行われた国際妄想学会シンポジウムの会場で著者とお会いした際、すでに氏は重度の中二病でもありました。突然、勝手に私のカバンを開けて「妄想力の問題」を突っ込まれたときは、さすがに驚きました。氏がしし座の彼方の惑星にご家族と移住された今となっては、連絡する手段もなく、当時の有難迷惑も良い思い出となっております。本書を翻訳する上で、何点か難しい問題がありました。山田カナの残したメモの謎/ガリマールなのかガリマーロなのか など。

氏にモールス信号にて、20Y1年に、お伺いしたところ、偶然、電波の圏内だったらしく信号が届いたようでした。「適当だから(笑)。特に気にしなくてOK」とお返事が20Z5年に返ってきました。一応、正しい氏の答えも用意されていたそうですが、地球時間30年前とのことで、ご本人も失念したようです。

邦訳版が日本の日記妄想学をこれから学ぼうとする学生のみなさんのお役に立てること願っています。

20ZZ年10月14日 卍丸                       この物語はすべてフィクションです


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