第4話エピローグ 2021年 秋 サルトル仮称

こうして、俺の持ち込んだ「交響曲第5番第4楽章 ある少年の日記・断章」は無事、ガリマーロ社経由で自費出版することができた。西村さんに出版の際、どうやったら自費出版できるのか色々と細かいことを聞いた。ハナオカと悪子はその後、悪子がSNS上でハナオカの陰口を言ったりしていたことをハナオカが知り、絶縁となった。ハナオカはハナオカで強引なやり方を曲げることなく、ついには山下さんともトラブルになり、山下さんも連載から降りてしまったらしい。

現在、西村さんは「ゼネコンを変えていけ!」を更新しておらず、新たに「ナンセンス文学と中二病との相関関係」という長編処女作を俺との共同作業で執筆準備中だ。

「あなたまた何か書いているの?」と、キッチンで夕食の跡片付けをしながらシモーヌが俺を見ることもなく聞く。「あー、ちょっと仕事の資料作りやよ。」と、俺は小さな嘘をつく。「中二病」と、言いながらシモーヌは俺の腕の中で眠る娘のリサ仮称を見つめ優しく微笑んだ。


オリオン座が頭上に輝き小さな鼓動が伝わる水平線

もうすぐ陽が無常の優しさで世界を包む

白んで行く東の空に助けてと僕は叫ぶ

白んで行く東の空に僕は何を願えば良いんだろう

白んで行く東の空に僕はただひとつのことを願った



妄想力の問題 ある少年の日記・断章 完

この物語はフィクションです

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