エピローグ
あの、悪夢の中から救出されたような出来事から、三年が経った。
現在俺は、新聞記者の卵として、下積み生活を送っている。
冤罪で、危うく死刑判決を受けかけた俺は、同じような境遇の人を少しでも助けたいと思った。そして、たとえ、悪霊に操られていたとしても、モラルのない報道を繰り返したマスコミや、証拠を握りつぶしていた検察に対する、公平中立な抑止力になれるよう、日々勉強を続けている。
先輩記者の取材に同行していると、悪霊に取り憑かれている加害者や、被害者に出合うことが多くなった。その度に俺は、幽霊退治を生業としている業者を紹介している。その業者の社長は、もちろん、自称ゴーストバスターの、あの人だ。
今日はその業者の社員であり、俺の学生時代の後輩でもある、小泉梓馬に、久しぶりに、会うことになっている。もちろん腐れ縁の鶴屋にも声をかけたが、オカルトな談合は勘弁してくれということだった。
三年前、俺が娑婆に出てすぐの頃、小泉が玲奈の形見だと言って渡してくれた、まっさらな位牌は、今も自宅の仏壇に鎮座している。
位牌を受け取ってから、頻繁に玲奈の夢を見るようになった。夢の中で彼女は、毎週末、お墓にシュークリームだの、大福だのを供えるようにと、俺を脅してくる。この前は、大好きだったお酒を要求してきた。
墓石を痛めると言って断ると、彼女は、ほっぺを膨らませて、恨めしそうな顔をする。
そんな夢を見ていると、背筋が凍るくらい、彼女を愛おしく思うのだ。
目覚めると、彼女の姿はどこにも見えない。でも、きっと俺のそばにいるはずだ。監視しているはずだ。見守っているはずだ。
約束してしまったのだもの、仕方ない。俺は今日も、彼女の分まで生きてやる。
今は亡き、浮場玲奈の恋人として恥ずかしくないように。
――笑顔を絶やさず生きてやる!
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