#48 出生の真実




 台所でエミをじっと抱きしめながら、今起こっていることとエミから聞いた話を必死に理解しようと頭の中をフル回転させていると、玄関から人が出て行く音が聞こえた。


 するとリビングから再びママの怒鳴り声が聞こえ始めた。



 エミは「ママの声うるさい。耳障りだから黙らせてくる」と言って、無表情で立ち上がりリビングに向かおうとした。


『ちょ、ちょっと待って、エミ! どうするつもりよ!』

 わたしの呼び止めにも無視して、エミはリビングにいるパパとママのところへ近寄った。


 私も慌てて追いかけると


「ママうるさい。被害者ぶるのもいい加減にして。 恥ずかしくないの?」


「エ、エミ! 親に向かってそのクチの聞き方はなんなの!!!」


「うるさいって言ってるでしょ! 16年前にアンタたちがしてきたこと、全部知ってるんだから!」

 エミのその言葉で、ママは明らかに顔色が変わり、唇を震わせながら黙った。


「16年前に人の家庭ぶっ壊して、平気な顔して生きてきた人間のクズが、今度は自分が同じことされたら被害者ぶるとか、人として恥ずかしくないの? おまけにアンタはその16年前の被害者の息子に、逆恨みの八つ当たりして罪の意識なんてこれっぽっちも無かったじゃん! 全部アンタの自業自得じゃないの! こういうの因果応報っていうんだよ! なんであんたみたいな腐ったクズのこと、親だと思わないといけないのよ! ふざけるな!」


『ちょ、ちょっとエミ!どういうこと??? 16年前の被害者の息子って、もしかしてソウジくん???』


「お姉ちゃん・・・本当は私じゃなくてソウジ先輩から話す予定だったんだけど・・・そうだよ。パパの前の奥さんって、ソウジ先輩のお母さんだよ。 パパとママが不倫して妊娠したから、ソウジ先輩を妊娠中の奥さんを捨ててパパはママと再婚したんだよ」


『え?ちょ、ちょっと待って! え???ウソでしょ??? 冗談だよね???』


 エミは返事をせずにママを睨んでいた。

 パパは項垂うなだれてピクリとも動かず、ママはエミや私から目を逸らして震えていた。


 反論しようともしない二人の様子から、エミが言っていることが全部事実なんだと、嫌でも分かった。


「お姉ちゃん、もう気が付いたかもしれないけど、ソウジ先輩と私達は腹違いの兄妹なんだよ。 ママはそれを知っててソウジ先輩のことを目の敵にして冷たくしてた罪の意識なんて全く無いクズなんだから。 パパだって、最初だけ気にかけてるフリして、ずっと見て見ぬふりしてた無責任なクズだからね」


『そ、そんなことって・・・・』





 16年前にソウジくんを妊娠中に離婚して、ママは不倫して妊娠したって・・・私のことだよね











『ママが私を妊娠したから、ソウジくんのお母さんは離婚されたの・・・?』


「・・・そういうこ『エミは黙ってて』


『パパとママに聞いてるのよ!!! ちゃんと答えてよ! 私が生まれたからソウジくんは不幸な目にあってるのか聞いてるのよ!』


 私は泣きながら叫んだ。


 何も答えようとしない二人に掴みかかって暴れて、エミが私を止めようとして必死に抱き着いてくれて、それでもパパもママも返事をしようとしてくれず、そんな二人を心底嫌悪して、もう親とは思えなくなった。


 私に抱き着くエミは、泣きながら「お姉ちゃん、こんな奴らのことほっとこ!? 二人で家出ていこ?」と何度も私に話しかけてくれていた。


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