最初の依頼
さて、宿屋で無事に部屋を取ることができた俺たちは今一つのキングサイズのベッドの前に立っていた
「………なぁ、レヴィさんや、二人部屋を取ってきてと言わなかったか?」
「……?部屋のサイズはちゃんとした二人部屋ですよ」
「ああ、そうだな………ベッド以外はなぁ!!」
ああ、悪魔なんかに任せた自分が馬鹿だった、レヴィが突然私、さっきから全然お役にたたてません!悪魔なのに!なので、せめて宿の予約くらいは私がします!とゴリ押しされてしまったのだが……、レヴィの機嫌を損ねてでも俺が予約するべきだったな……。
「ところでベッドが一つしかないようですが、一緒に添い寝しますか?」
「するか、馬鹿野郎!」
「えー」
えーっじゃない!文句を垂れるな悪魔が!
「でも、ご主人様どこで寝るんですか?」
「……俺が追い出される前提なのな、別にいいけどよ」
「アーソウデスネー」
「……はぁ、俺の寝床は作るよ」
「作る?」
そう、魔法使いの爺さんの知識の中には魔法でさまざまなものを作ることができるとある。つまり、ベッドも作って仕舞えばいい。
「とりあえず、空いてるこっちのスペースにするか……【創造】」
「はい?」
俺が手をかざしてその呪文を唱えると何もない空間からまず木材が出てきた。いわゆる木属性魔法というやつだ。
「からの、【物質変形】」
「…………………」
そしてもう一つの魔法を行使し、木材を変形させて木のベットを作った。
「あとは適当に枕とか作ってやれば…【創造】【物質変形】」
俺は綿やら、布やらを作り出し、枕に作り替え、ベッドを完成させた。
「いっちょあがりっと、どうした?そんなアホっ面して」
「…………いえ、なんでもありません」
そういったレヴィの顔は少しむくれているように見えた、やっぱり故意的かよ。だが、残念だったな、漫画や小説のようにそんな簡単に俺は落ちないんでな、というか悪魔とのフラグなんて立ってたまるか。
〈翌日〉
俺たちは宿屋からチェックアウトし、早めに暗殺者ギルドの本部を訪れた。扉は閉まっており、閉店のカードがかかっていたが、これはおそらく俺たちのためだろう。
「マスター、邪魔する」
「お邪魔しますー」
「ん?ああ、お前たちか」
一瞬閉店なのにドアを開けて入ってきた俺たちを警戒していたようだが、姿を見るや否や歓迎の姿勢を見せた。
「よし、テメェらちょっと座っとけ、ちょっと奥行ってくるからこれでも飲んで暇つぶしとけ」
「……俺はまだ成人してないんで」
「ありがとうございますー!」
マスターは一言言うと俺たちの前にそれぞれ一本ずつの酒の入ったコップを取り出した。俺は酒を飲めないので断ったが、レヴィはゴクゴクと一気飲みをしている。
「ぷふぁぁぁぁぁ!!マスター!要らないならそっちも貰っていいですか!?」
「え、あ、ああ、いいぞ…」
「ではいただきます!」
そう言うとレヴィは俺の前のコップを横から凄まじい勢いで奪い、ゴクッゴクとさっきにも増して激しい一気飲みを披露した。
「まさか人間の技術がここまで発達していたなんて……すごく美味しすぎる!!」
「あ、ああ、よかったな」
なんか……レヴィって残念な女感あるよなぁ、こういうところとか特に。
「悪い悪い、待たせたな」
「いや、言うほど待ってねぇぞ」
「マスター、酒のおかわりを所望するのです」
「お、おお、いいが、嬢ちゃんちょっと性格変わったか?、それとその酒からは別料金で頼むぞ」
「うっ」
残念ながら今の俺たちの手持ちはゼロだ、しかしレヴィの悲しそうな上目遣いを見て男として何もせずにはいられなかった
「マスター、それは今回の依頼の報酬から抜いてもらえるか?」
「ん?まぁ、お前らの実力は確かだからなぁ……いいぜ貸し一つだな」
レヴィはやったー!と歓喜の舞を踊っている、君、中身と外見の差が激しいんだよ。
「おっと、それじゃ依頼の話を進めるぜ?」
「おう、よろしく頼む」
「それじゃあこの紙を見てくれ」
そういうとマスターは奥から戻ってきたときに持ってきた一枚の紙を差し出してきた。
「えっと?依頼の内容は…………………ん??」
何度も紙の中に書かれている内容を読み返し、自分がボケているわけではないことを確認してマスターに紙を返した。
「おいおい、勘弁してくれ、渡す依頼間違えてるぞ」
「………?いや、合ってるぞ?」
「な訳ないだろ、なんだよこの国の第一王子の暗殺って、どう見てもルーキーが受ける依頼じゃないぞ」
そう、そこの依頼の内容はこの国、ブラネット王国の第一王子であるヘンリー・ブラネットの暗殺であった、てか、この国の名前初めて知ったな。
「うむ、だが、下手な暗殺者に任すわけにはいかないだろう?本来なら幹部クラスの連中に回すんだがこんな時に限って別の国に遠征に行ってたり、休暇中だったりして以来の連絡を取れねぇんだよ、俺が行こうかと思ったがその時現れたのがお前らだ、神に感謝でもしてぇな」
「……それでレベルが段違いである俺たちを呼んだと……」
うむ、なんだか……高評価されすぎてるような気が…
「なぁ、頼むぜ、勿論報酬はたんまりとある、前払いで白金貨十枚、依頼が完了したら白金貨五十枚だ」
「白金っ!?」
白金貨は一枚で日本円で直すと一億円ほどの価値があるものだ
「しかし、そんだけの大金を払えるってことは……」
「お察しの通り、この国の第二王子様からの依頼だよ」
「権力の争いか」
全く、せっかく兄弟に生まれたのだ、仲良くしようなどとは思わないのか。
「んで、返答は?」
「……受けるに決まってんだろ」
「そうこなくっちゃな」
ニヤリとマスターと共に無気味な笑顔を見せる
「んじゃ、今日はそこにつったおれてる嬢ちゃん連れて帰ってくれ、機嫌は三ヶ月だからな準備は早くしろよ」
「ああ、今日片付けてくるわ、じゃ!」
「ん?今テメェなんて」
マスターが振り返って店出て彼らを追いかけようとした時にはグロッキーになったレヴィを背負って出て行った凛の姿が点のように小さくなっていく姿しか見えなかった
「………大丈夫かよ」
マスターができるのはただ心配することのみであった。
異世界召喚されたけど僕は一般人なので戦いは遠慮します。〜殺人者による異世界暗殺記〜 金木城 @joker96
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